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竹林軒出張所

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『聖職のゆくえ』(ドキュメンタリー)

聖職のゆくえ 〜働き方改革元年〜
(2019年・福井テレビ)
NHK-BSプレミアム ザ・ベストテレビ2020

奴隷労働化する教師という職業

『聖職のゆくえ』(ドキュメンタリー)_b0189364_21323074.jpg 小学校、中学校教員が、大変な激務になっており、残業が過労死ラインの80時間を優に超える先生が多数いる現状を告発するドキュメンタリー。しかもこういった超過労働に対して、残業手当がほとんど支払われていないという驚くべき実態も明らかにされる。
 公立教員に時間外手当が支払われないのは、1971年に定められた給特法(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)が根拠になっており、この法では、残業手当の代わりに給与の4%が一律に支払われることを定めている。当時はともかく、現状では100時間以上働く教員がいるのに、明らかにこれは不当労働行為に当たるんだが、こういった状況が変わるような様子はあまりない。このドキュメンタリーでも文科省の役人にインタビューするんだが、例によって木で鼻をくくったような相変わらずの対応を見せてくれる。
 このドキュメンタリーのすごいところは、実際に中学校教員に密着して、仕事の現場を撮影していることで、彼らがどれほどの過重労働を強いられているかが実感できるという部分である。
 特に部活動の指導などはほとんど手弁当であるが、実は学校の現場では、給特法のために余計な費用がかからないことから、教師にどんどんこういった仕事が割り振られているという実態がある。残業手当が支払われるようになれば、今の状況で学校運営をやるとなると大変な費用がかかるようになるわけだ。要は、教師の善意につけこんで、無給の労働を強いているというのが現状なのである。
 教師の多くが、過重労働を強いられ、精神疾患を負う人々も増えている。そういった多くの問題の根源に給特法、そして人の善意につけこんでいる(そして何も変えようとしない)行政という構図があることが見えてくる。日本の教育の前途の危うさが見えてくる、優れた(目ウロコ)告発ドキュメンタリーだった。
2019年日本民間放送連盟賞テレビ部門準グランプリ受賞
★★★★

参考:
竹林軒出張所『学校の「当たり前」をやめた。(本)』
竹林軒出張所『みんなの学校(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『「みんなの学校」がおしえてくれたこと(本)』
竹林軒出張所『学校って何だろう(本)』
竹林軒出張所『日本の教育を変える!(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『小さな駅で降りる(ドラマ)』
竹林軒出張所『スクールセクハラ(本)』

by chikurinken | 2021-11-03 08:29 | ドキュメンタリー
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