日曜劇場 林で書いた詩(1974年・北海道放送)
脚本:市川森一
演出:長沼修
出演:桜木健一、香山美子、金田龍之介、浜村純、岡本茉利
桜木健一の快演が見物 伊藤整の「林で書いた詩」をモチーフにしたドラマ。
小樽の図書館に勤める冴えない図書館員(桜木健一)の前に謎めいた美女(香山美子)が現れ、その美女の周辺が少しずつ明らかになっていくというようなストーリー。
主人公はあくまで図書館員ではあるが、どちらかというと狂言回しみたいな役割で、美女と、かつてこの地で出会った男との関係がストーリーの中心になる。これが、あの「林で書いた詩」と連なるテーマになっていく。ちなみに「林で書いた詩」は、「やっぱりこの事だけは言わずに行かう。 今のままのあなたを生かして 寂しければ目に浮かべてゐよう。」というような詩である。ドラマの中で桜木健一によって朗読されるが、読むスピードが速くてあまり頭の中に入ってこなかった。
主演の桜木健一は、この頃
『柔道一直線』や
『刑事くん』など熱血漢の役どころばかり演じており、この冴えない図書館員の役は相当なイメージチェンジであるが、大変な好演である。行動だけで周囲に笑いを起こすような少し外れた存在で、これがこのドラマの一番の見所かと思う。
脚本担当は市川森一で、ストーリーはよく練られており、1時間ドラマとしてはなかなかの力作である。同じ「日曜劇場」の
『春のささやき』でも、芸術(音楽)作品をドラマのモチーフに使っていたが、そういうことから推察すると、こういう他の作品をヒントにしてシナリオを作るということを、市川森一は当時ちょくちょくやっていたのかも知れない。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『柔道一直線 (1)、(2)(ドラマ)』竹林軒出張所『刑事くん (1)(ドラマ)』竹林軒出張所『日曜劇場 春のささやき(ドラマ)』竹林軒出張所『日曜劇場 ダイヤモンドのふる街(ドラマ)』竹林軒出張所『日曜劇場 天使を乗せたタクシー(ドラマ)』竹林軒出張所『黄金の日々 (1)〜(3)(ドラマ)』