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竹林軒出張所

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『失われた色を求めて』(ドキュメンタリー)

失われた色を求めて 植物染め・伝統100色を今の世に
(2017年・NHK)
NHK-BSプレミアム プレミアムカフェ

草木染めの魅力にじわじわと染まってくる

『失われた色を求めて』(ドキュメンタリー)_b0189364_22013256.jpg 草木染めを追究する染織家、吉岡幸雄の仕事を通じて、日本の伝統色を紹介するドキュメンタリー。かつてBSジャパンで放送された『日本の伝統色』シリーズとよく似た内容……というより焼き直しという感じである。もっとも、たとえ「焼き直し」であったとしても、『日本の伝統色』シリーズがすでに放送されない状態であるため、こういうドキュメンタリーを作ることには大いに意義がある。吉岡氏はあのシリーズにもたびたび登場していたことだし、「その後の吉岡氏の仕事」という意味あいも出てくる。
 このドキュメンタリーで紹介される色は、紫色、茜色、藍色、紅色、黄色などで、当然すべて草木染めである。ただしその多くは、技法が現代に伝えられておらず(つまり伝統が途絶えており)すでに失われている。そのため、吉岡氏は、延喜式などの古代文献を基にして、古代の技法を探求し再現するのである。試行錯誤で再現を試みるため、相当な研究と労力が費やされた上で初めて再現された色も多い。同時に一度失われた伝統技法はそう簡単には戻ってこないのだということも思い知らされる(そもそも材料となる植物がすで生産されていなかったりする)。
 番組では、それぞれの色ごとに、原料の生産から、色素の抽出、染めの行程が順に紹介され、地味ではあるが大変興味深い記録映像が紹介される。最後の黄色については、刈安という植物から抽出され、これは行程も比較的簡単だそうだが、他の染色技法と組み合わせることでさまざまな色を表現できる優れものであることが紹介される。たとえば藍で染めたものをさらにこの刈安で染めることで緑系の色を出すことができるなどという事実は、僕は寡聞にして知らなかったため、「目からウロコ」であった。他の色についても、何度も染色行程を重ねることで色の濃さを調整するということであった。万葉・平安時代の色が多様なのは、おそらくこういった地味な積み重ねの作業のなせる技であったのだろうということがよくわかる。
 このように、伝統技法や色彩に関心のある向きには、堪えられないドキュメンタリー作品になっている。ちなみに、このドキュメンタリーに登場する吉岡幸雄氏、2019年に亡くなったそうである。現在は子息の吉岡更紗氏(この番組にも登場)が工房の跡を継いでいるらしい。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『一刀一絵 江戸の色彩を現代に甦らせた男(本)』
竹林軒出張所『幻の色 よみがえる浮世絵(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『とはずがたり(本)』

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 以下、以前のブログで紹介した『日本の伝統色』シリーズについての評の再録。

(旧ブログ2004年12月14日の記事より)
土と水と炎が創る神秘の色 〜日本の伝統色〜
(2003年・BS Japan)
ドキュメンタリー

『失われた色を求めて』(ドキュメンタリー)_b0189364_22014098.jpg 日本の伝統文化をやらせたら日本一のテレビ東京が2004年正月に放送したドキュメンタリー。
 弁柄色、群青色、燻し瓦色、黄土色、赤瑠璃色、緑釉色、鋼色の7色をテーマに、さまざまな伝統技術(焼き物や工芸など)を紹介する。
 フムフムとうなりながらも、伝統技術の持つ美しさ、力強さ、高度さに驚嘆させられる。素晴らしい。
★★★★
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(2005年1月2日の記事より)
古の歌人が愛した色 〜日本の伝統色〜
(2004年・BS Japan)

『失われた色を求めて』(ドキュメンタリー)_b0189364_22014401.jpg 色をテーマに伝統技術を紹介する「日本の伝統色」シリーズの第三弾(だと思う)。昨年放送されたものの再放送。
 茜色、女郎花色、露草色、萌黄色、橡(つるばみ)色の五色を取り上げる。いろいろと知るところが多い。
 このシリーズは、見せ方もうまいし内容も濃厚で、DVDで発売してほしいくらいだ。
★★★☆

by chikurinken | 2021-05-28 07:01 | ドキュメンタリー
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