ウルトラセブン (1)〜(3)(1967年・円谷プロ・TBS)
脚本:金城哲夫
演出:円谷一、野長瀬三摩地
出演:森次晃嗣、菱見百合子、中山昭二 、石井伊吉、阿知波信介、古谷敏
ガジェットに大きな見所あり
何を血迷ったかNHK、日曜深夜に『ウルトラセブン』の4Kリマスター版を放送している。ちなみに月曜深夜には『ウルトラQ』の4Kリマスター版も放送している。元々は、現アラ還世代の幼少期に放送されたものであるため、視聴者の中心もそのあたりを設定しているのか。もしかしたら、ジイジが録画したものを孫と一緒に見たらどうです……というような趣向なのかどうかはわからないが、こういうマニアックな企画自体は歓迎したいところである。
今回僕が見たのは、第1話「姿なき挑戦者」、第2話「緑の恐怖」、第3話「湖のひみつ」で、僕自身は小学生のときに再放送を見ただけなんで、あいにく内容はほとんど憶えていなかった。元々『ウルトラセブン』が放送されたのは僕が幼児のときだったが、うちのテレビにはなぜか映らなかった(他の子どもの家では受像可能だった)ために、友だちの話を聞くばかりで、実際に目にしたのは小学生になってからである。ちなみに『ウルトラマン』と『ウルトラQ』は概ねリアルタイムで見ているため、僕にとって『ウルトラセブン』は、この2作品とは少し温度差がある(要は思い入れがやや小さめ)。
閑話休題。第1話は、当然導入部分として非常に大きな役割を背負うわけだが、実際のストーリーは、主人公のモロボシ・ダン(森次晃嗣)がいきなりウルトラ警備隊の前に登場して、その後、ウルトラ警備隊のメンバーに納まるという、いかにもインスタントなプロットであった。子ども向けにしても少し安直に過ぎないかと感じる。ともかくこのモロボシ・ダンが、実はウルトラセブンという宇宙人で、変身し巨大化して、悪い(地球侵略の意図を持った)宇宙人や怪獣と戦うというストーリーである(ご存知だろうが)。これについては毎回ほぼ共通。
ストーリー自体は、第1話から窺われるように単純で安直だが、登場するウルトラ警備隊のガジェットが凝りまくっていて、大人の目から見ても大変よくできていると思える。当時子どものあこがれだった『サンダーバード』並みで、たとえば戦闘機、ウルトラホーク一号が3機(アルファ号、ベータ号、ガンマ号)に分離するというのも面白い趣向である。山が開いて、地下に隠された要塞基地から戦闘機が発進するシーンも素晴らしい。なおかつ、Apple Watchを先取りするようなビデオシーバー(腕時計型無線テレビ電話)は、当時子どもたちがみんな欲しいと感じるようなツールだった(当然存在しなかったが)。ともかく『ウルトラセブン』は、このようにガジェットが非常に魅力的なんである。さらに言えば、モロボシ・ダンが携帯していて必要に応じて取り出せる「カプセル怪獣」というアイデアも秀逸。第1話には、カプセル怪獣、ウィンダム、第3話にはミクラスがそれぞれ登場していた。どちらも敵にやられてしまう損な役回りであるが、ミクラスについては、マヤ文明の神を思わせるような風貌が魅力的である。
僕にとっての一番の見所はアンヌ隊員の菱見百合子で、エリート集団、ウルトラ警備隊の一員でありながら、優れた女医でもあるという設定。ただやはりその立ち位置がややマスコットガール的なのは時代のせいである。またモロボシ・ダンに恋心を抱いている様子を見せるのも、やや学園ドラマ風である。これも時代のせいか。
このようにいろいろと見所もあるが、ストーリー自体は、先ほども言ったように単純かつ安直であるため、ドラマ性を楽しみたいという視点で見ると少しガッカリする。部分部分はよくできているが、総体として物足りないというそういう類の作品。だがこれも、当時、子どもたちのSF入門として大いに貢献していたんだろうと今にして思う。こういう作品群のためか、我々の世代はSFに対して敷居が大変低かったようである。
★★★参考:
竹林軒出張所『ウルトラセブン (42)、(43)(ドラマ)』竹林軒出張所『私が愛したウルトラセブン(ドラマ)』竹林軒出張所『万華鏡の女 女優ひし美ゆり子(本)』竹林軒出張所『総天然色ウルトラQ (15) 他(ドラマ)』竹林軒出張所『色づくQ』竹林軒出張所『ふたりのウルトラマン(ドラマ)』竹林軒出張所『ジャイアントロボ (1)(ドラマ)』竹林軒出張所『シルバー仮面 (1)、(2)(ドラマ)』竹林軒出張所『変身忍者 嵐 (1)、(2)(ドラマ)』竹林軒出張所『鋼鉄の巨人(スーパージャイアンツ)(映画)』--------------------------
以下、以前のブログで紹介したひし美ゆり子(菱見百合子)の著書についての評の再録。
(旧ブログ2006年8月7日の記事より)
セブンセブンセブン
アンヌ再び…ひし美ゆり子著
小学館文庫
「ウルトラセブン」で「アンヌ隊員」を演じたひし美ゆり子のエッセイ。「ウルトラセブン」の撮影話や「セブン」観などもある。
面白いことは面白いが、「アンヌ隊員」に思い入れのない人が楽しめるかどうかは不明。
★★☆