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竹林軒出張所

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『誕生 ヤマト王権』(ドキュメンタリー)

誕生 ヤマト王権 いま前方後円墳が語り出す
(2021年・NHK)
NHK-Eテレ ETV特集

憶測と思い込みに基づく「論証」

『誕生 ヤマト王権』(ドキュメンタリー)_b0189364_15063830.jpg 奈良県にある箸墓古墳がヤマト王権、ひいては日本統一政権の端緒になったということを紹介するドキュメンタリー。
 内容は憶測と思い込みに基づくもので、まったく信頼性に欠けるし、説得力もないが、一方で良くこういった〈大胆な〉主張の番組を作れるなと思う。専門家や研究者が見たらどう思うかなどとは考えないのだろうか。
 古代史についてはいまだにわからないことが多いために、現在の日本古代の歴史学のほとんどが憶測と思い込みに基づいているのはある程度致し方ないところだが、そうは言っても、出演者(学者)が「と思われます」とか「とも考えられます」とか、ごまかすような表現ばかりを使っているにもかかわらず、それに映像を交えることで、それがさも事実であるかのように視聴者に思い込ませるのは、ある意味、犯罪行為である。番組で主張するのは大いに結構ではあるが、「憶測」であると保留するぐらいのたしなみは必要ではないか。
 さて、この番組では、全国の前方後円墳を紹介し、奈良県にある箸墓古墳がもっとも古いものであると紹介する(実際には必ずしもそうとは言えない)。そしてそれが、日本列島のかなり広い範囲を支配下に置いたヤマトの大王の墓だと主張する(『日本書紀』で「孝霊天皇皇女の倭迹迹日百襲姫命の墓」とされているにもかかわらず、だ)。これは出土物から解釈したものだが、別の解釈はいくらでも成り立つのに、番組の中では、ある学者の試論が事実であるかのように喧伝されてしまう(学者は「と考えられます」みたいにコメントしているが)。呆れるのを通り越して怒りさえ覚えた。
 この番組の唯一の長所は、全国の前方後円墳を紹介して、形の類似性(これも少し怪しいが)や形状を紹介した点で、これは映像で紹介され非常に興味深かったが、しかし、先ほどのような理由で、途中から本当に嫌気がさしてきた。大和に邪馬台国があったなどと気安く公言しないでほしいものだ。
★★☆

参考:
竹林軒出張所『失われた九州王朝(本)』
竹林軒出張所『「邪馬台国」はなかった(本)』
竹林軒出張所『盗まれた神話(本)』
竹林軒出張所『「風土記」にいた卑弥呼(本)』
竹林軒出張所『法隆寺の中の九州王朝(本)』
竹林軒出張所『倭の五王(本)』

by chikurinken | 2021-05-03 07:06 | ドキュメンタリー
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