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竹林軒出張所

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『真実への鉄拳』(ドキュメンタリー)

真実への鉄拳 中国・伝統武術と闘う男
(2020年・NHK)
NHK-BS1 BS1スペシャル

出る杭を打つことの弊害が見えてくる

『真実への鉄拳』(ドキュメンタリー)_b0189364_08392987.jpg 中国では、伝統武術の「達人」がテレビに出て、さまざまな奇跡を起こす。「気」の力で大男を倒したり、鳩に触るだけで飛べなくさせたりなど、中国四千年の神秘を体現するかのようなパフォーマンスを見せているという。
 しかしそのほとんどは言うまでもなくインチキである。そしてそれに異議を唱える総合格闘家がいる。徐暁冬という男がそれで、彼は自称「中国総合格闘技の第一人者」で総合格闘技のジムも経営している。その彼が、中国伝統武術に喧嘩を売った。そんなに強いなら(軽々と大男を倒せるなら)俺と戦って倒してみろということである。
 これに対してある伝統武術の大家が、彼に戦いを挑んだ。これはインターネットでも中継されたが、なんとこの大家、徐のパンチ数発を浴びて血だるまになってしまった。ものの10秒で決着が付いたのである。というわけで、徐の言動が図らずも証明されてしまった。もちろん第三者的に見れば意外でも何でもなく、逆にこの程度の技術しか持ってなくてよく総合格闘家に挑戦したなと思うレベルである。このような戦いが、伝統武術のいろいろな「達人」との間で幾度か繰り返されて、「達人」たちはことごとく無様に敗北し、彼らの欺瞞性が明らかになってしまった。このあたり、どこかで見聞きしたような話で、デジャヴのような印象さえ受ける。
 その一方、伝統武術界は、その対策として他流試合を禁止するという方策に出た。しかも徐の方も行政筋から圧力が加わり、(これまでの広報手段であった)インターネットの使用も制限されてしまう。これを承けて、ジムも閉鎖されることになる。さらに徐は中国国内で選手として試合することもできなくなり、現在、タイにまで赴いて戦ったりしている状態である。体制に挑戦すると怖い(特に中国では)ということがよくわかる話で、こういう変革者を圧力でつぶすようなことをやっていたら発展すべきものも発展しないのは火を見るより明らかなんだが、今の中国ではそういうことが平然と行われてしまう。独裁国家では、力を持っている者に異を唱えると潰されるのである。
 この徐自体、見たところ、総合格闘家としてはそれほど強いとも思えず、おそらく日本で大会に出ても対戦できる相手がいないのではないかというレベルである。伝統武術界が徐を潰そうと思うのならば、むしろ総合格闘技の世界から一流の選手を呼んできて試合をさせれば良いし、その方が中国格闘界の発展の上でも有意義だと思うが、とにかく中国の上層部は超保守的で、保身しか考えていないのかどうだか知らないが、こういう点からも、中国ではあらゆる分野で発展が望めないのではないかと感じさせるのである。こんなミクロレベルのことからも、大丈夫か中国……という思いを強くさせられたのだった。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『ドラゴン怒りの鉄拳(映画)』
by chikurinken | 2021-03-31 07:39 | ドキュメンタリー
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