THE 陰翳礼讃 谷崎潤一郎と日本の美」
(2021年・NHK)
NHK-Eテレ ETV特集
暗すぎる映像が多く退屈した
谷崎潤一郎の随筆、『陰翳礼讃』は、日本家屋の暗がりに美的な要素を見出すという作品だが、その内容を紹介しながら、映像として表現したものをあわせて映し出していくというドキュメンタリー。
コンセプトはなかなか面白いが、そもそも『陰翳礼讃』自体に関心がなければ、あまり興味が湧く素材ではないかも知れない。僕自身はすこしばかり関心があったんだが、このドキュメンタリーの中で紹介された『陰翳礼讃』の記述については、むしろ独断的と感じたためにあまり共感するところもなく、そのために映像もそれほど魅力的に映らなかった。実際、途中で飽きた。
また、途中、何度か文化人が登場して『陰翳礼讃』について語るシーンがあるが、日本文学研究者(ロバート・キャンベル)や建築家(安藤忠雄)ならまだわかるが、絵の具を塗りたくったような作品を作る現代美術家(大竹伸朗)が『陰翳礼讃』についてコメントしてその影響を受けていると語ったところで、それを聴いた僕は、大した感慨を抱かない。両者の繋がりがまったく感じられず、『陰翳礼讃』の映像化部分が純和風であったのときわめて対照的で違和感しかなかった。
コンセプトはそこそこ興味深いと感じたが、できあがったものは、全体的に何となく中途半端で、「こんなんどうです?」と示されてみたものの、「いやー、ええですわ」と答えるしかないようなできの作品だった。
また、『陰翳礼讃』だけに仕方がないが、暗すぎる映像が多かったのも退屈する理由の一つだった(うちのテレビでは真っ暗にしか見えず、微妙な陰影は表現されなかった。4Kのユーザーなら別の感慨があるやも知れぬ)。
★★★参考:
竹林軒出張所『蓼喰う虫(本)』竹林軒出張所『台所太平記(本)』竹林軒出張所『瘋癲老人日記(映画)』竹林軒出張所『痴人の愛(映画)』竹林軒出張所『鍵(映画)』竹林軒出張所『細雪(映画)』竹林軒出張所『刺青(映画)』竹林軒出張所『卍(映画)』竹林軒出張所『春琴抄(映画)』竹林軒出張所『つれなかりせばなかなかに(本)』竹林軒出張所『谷崎万華鏡(本)』