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竹林軒出張所

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『黒部の太陽』(映画)

黒部の太陽(1968年・三船プロ、石原プロ)
監督:熊井啓
原作:木本正次
脚本:井手雅人、熊井啓
音楽:黛敏郎
出演:三船敏郎、石原裕次郎、辰巳柳太郎、加藤武、宇野重吉、二谷英明、樫山文枝、日色ともゑ、高峰三枝子、佐野周二

演出も脚本も陳腐

『黒部の太陽』(映画)_b0189364_22484425.jpg 1956年の黒部ダム(黒四ダム)工事の様子を描いたドキュメント風劇映画。
 黒部ダム工事の映画ということになっているが、ほとんどは大町トンネルの掘削工事が舞台である。この部分が取り上げられたのはこの工事が難工事であったためだろうが、トンネル掘りにそれほどのドラマがあるわけではなし、それほど面白い題材とも感じない。
 登場人物の親子関係や家族関係を盛り込んでドラマチックにしようという意図は感じられるが、大したドラマになっていないところが辛い。結局のところ、困難な難工事を成し遂げたという「プロジェクトX」的な話に終始していて、全然感情移入できない。要はアリが一生懸命巣を作っているのを俯瞰で見ているというようなレベルの話である。こういう感覚は、すべて映画の中で「人物が描けていない」ことが原因ではないかと思う。
 工事のシーンも終始暗いため、劇場で見るんであればともかく、テレビ画面だとほぼ真っ暗で何をやってんだかよくわからない。途中、反抗的になって現場で暴れる労務者が出てきたりするが、誰なのか、どういう目的なのか、ストーリーの中でどういう意味を持っているのかがまったく見えてこない。主演の三船敏郎は存在感があって非常に魅力的ではあるが、他のキャストはどれもありきたりな演技に終始しており、三文芝居である。その上3時間以上(途中「休憩」あり)の長尺で、退屈きわまりない映画になってしまっている。
 三船プロと石原プロが低予算で企画し、劇団民藝がそれに協力した作品であるため、重鎮の宇野重吉をはじめ、民藝の役者が大挙して出演している。宇野重吉の息子である寺尾聰は、宇野重吉が演じる登場人物(佐藤工業の「森」)の息子役で登場。とは言え、ストーリーの中にこの「森」そして彼の息子が登場する必然性はほとんどなく、なんのための存在なのか、脚本上本当に必要だったのか、大いに疑問が残る。最後に登場する「森」の妻(北林谷栄)もなぜ登場したんだかよく意味がわからない。数合わせでキャラクターを増やしたんじゃないかと穿った見方までしてしまう。そういうこともあって、個人的に好きな役者がたくさん出ているにもかかわらず、全然魅力を感じなかった。演出も脚本も陳腐としか言いようがない。
 諸々の事情で今まであまり上映されることがなかった作品らしく、言って見れば「幻の作」のようだが、中身の乏しい、無駄な「大作」という印象の少し寂しい映画……というのが僕の率直な感想であった。
★★☆

参考:
竹林軒出張所『佐久間ダム建設記録第一部、第二部(映画)』
竹林軒出張所『三船敏郎・生誕100年(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『忍ぶ川(映画)』
竹林軒出張所『日本の熱い日々 謀殺・下山事件(映画)』
竹林軒出張所『天国と地獄(映画)』
竹林軒出張所『日本のいちばん長い日(映画)』
竹林軒出張所『太平洋ひとりぼっち(映画)』

by chikurinken | 2021-03-24 06:48 | 映画
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