RBG 最強の85才 前編・後編
(2018年・米Storyville Films他)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー
その気骨がいかにも魅力的
NHK-BSの『BS世界のドキュメンタリー』で前後編に分けて放送されたが、元々は同名タイトルの劇場公開映画である。2020年に死去したRBG、すなわちルース・ベイダー・ギンズバーグの生涯を紹介したドキュメンタリーで、製作、公開されたのは存命時である。
ルース・ベイダー・ギンズバーグは、日本ではあまり知られていないが、米国の連邦最高裁判事を27年間務めた人である。生涯、女性差別反対に尽くし、人種差別と同様、公民権という視点でこれを捕らえた。とは言え、声高にウーマンリブを叫ぶというタイプではなく、その語り口は非常に優しく真摯である。「男性の皆さん、私たちを踏みつけるその足をどけて」という言葉が、彼女の人となりを示している。過去、数々の女性差別案件について弁護を担当して勝利したが、その活動についてもこのドキュメンタリーで紹介されていく。
また、連邦最高裁判事になってからは(当然のことながら)リベラルな立場を貫き、9人の判事の合議制で出される(普通に考えると理不尽な)判決に対して反対意見を加え、それがあまりに的を射ているため、全米で注目される存在になっていた。そのために人々の間で人気を集めており、「Notorious RBG(悪名高きRBG)」などという愛称で呼ばれているらしい(「Notorious B.I.G.」〈あるラッパーの名前〉をもじったものらしい)。「もっとも人気のある85才」などとも呼ばれていたという。
このドキュメンタリーでは、そんなRBGの軌跡が辿られ、彼女の功績や人となりがよくわかるようになっている。理解のある夫の存在が大きかったことも紹介されているが、家族の大切さを描くあたりはいかにもアメリカ的と言えるか。かつて
『ルース・ベイダー・ギンズバーグ』という本も読んでみたが、何も伝わってこなかったあの本と違い、このドキュメンタリー作品では、RBGの仕事や素顔が映し出されているため、非常に面白さを感じる。トランプが大統領候補だったときに辛らつな言葉を浴びせて非難されたこともあるらしいが(RBG本人はその後謝罪)、これなどむしろRBGの立ち位置や正義感がよく伝わってくるような事例で、彼女の人格の紹介に一役買っている。そういう点でもよくできた、面白いドキュメンタリーだった。
ドキュメンタリー批評家協会賞政治ドキュメンタリー賞受賞
★★★☆参考:
竹林軒出張所『ルース・ベイダー・ギンズバーグ(本)』