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竹林軒出張所

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『三船敏郎・生誕100年』(ドキュメンタリー)

三船敏郎・生誕100年
サムライの真実・幻の大作映画・戦争と特攻

(2020年・NHK)
NHK-BSプレミアム

俳優三船敏郎に多角的に切り込む

『三船敏郎・生誕100年』(ドキュメンタリー)_b0189364_15411860.jpg 俳優、三船敏郎の生涯を辿ったドキュメンタリー。『MIFUNE: THE LAST SAMURAI』も同様の内容だったが、あれよりも密度が濃い、優れたドキュメンタリーに仕上がっている。
 三船の人となりが、当時親密だった人々から、さまざまなエピソードを交えて語られ、魅力的な三船像が浮かび上がってくる。彼らの話からは、三船が今でも多くの関係者から慕われていることがわかるが、それは三船が周囲、特に若い人々に気遣いする人物だったからということが見えてくる。さらに、若者に対するこのような気遣いは、かつて徴兵されていたとき、特攻隊の若者を送り出す指導的役割を与えられていたからではないのかという話に進んでいく。実際、これについては三船本人もインタビューで語っており、しかも似たような立場の役柄も、何本かの映画で演じている。戦争が彼自身、そして彼のキャリアに落とした影響の大きさが伝わってくる。
 また当然のことながら、三船が出演した映画のさまざまなシーンも出てくる。中でも『用心棒』のメイキング映像が珍しい。同時に『用心棒』撮影中、大男から壁にたたきつけられる演技で黒澤明が何度もNGを出したために、捨て身の三船が体を張った演技をしたため、鬼気迫るシーンができたというエピソードも新鮮である(シーン撮影の後、三船が黒澤のことを「あの野郎、ぶっ殺してやる」と言ったという話も面白い)。
 このようにいろいろな角度から俳優、三船敏郎に迫るドキュメンタリーで、そのためもあり内容が大変濃かった。なおタイトルに入っている「幻の大作映画」とは、三船が晩年企画していた『西遊記』のことを指す。スピルバーグにも監督を打診したが、結局企画倒れで立ち消えになったという話で、このあたりも詳細に紹介されていたが、このドキュメンタリーの中でそれほど重要な要素だったとは思えない。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『MIFUNE: THE LAST SAMURAI(映画)』
竹林軒出張所『羅生門(映画)』
竹林軒出張所『用心棒(映画)』
竹林軒出張所『椿三十郎(映画)』
竹林軒出張所『蜘蛛巣城(映画)』
竹林軒出張所『天国と地獄(映画)』
竹林軒出張所『無法松の一生(映画)』
竹林軒出張所『上意討ち 拝領妻始末(映画)』
竹林軒出張所『日本のいちばん長い日(映画)』
竹林軒出張所『黒部の太陽(映画)』

by chikurinken | 2021-02-01 07:40 | ドキュメンタリー
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