日曜劇場 春遠からじ(1986年・北海道放送)
脚本:ジェームス三木
演出:鎌田誠
出演:八千草薫、根岸季衣、小坂一也、梅野泰靖
適度な緊張感で穏やかな味わい 平凡な夫婦のところに、ある日突然、夫の愛人を名乗る女が現れて一騒動が起こるというストーリー。
製作が北海道放送であるため、舞台は北海道である(旭川らしい)。この女が現れて、妻の方(八千草薫)は心が穏やかでない。意を決してこの女のマンションに乗り込んでいき、「夫」(小坂一也)と出会うが、実際の夫(梅野泰靖)とは似ても似つかぬ人物で、夫の名前と身分を騙っていたというのが真相であった。この男に憤りながらも、妻の方はあらためて夫の存在について考え、二人は相手のかけがえのなさに気付くというふうに落ち着く。こういう種類の軽いドラマで、気分が滅入るような要素や見ていられなくなるような要素もなく、一家団欒でのんびり見て、夫婦のことを考えるよすがにすれば良い……という作品である。70年代、80年代のホームドラマによく見られるような穏やかな味わいで、今の視聴者が見ると物足りなさを感じるかも知れないが、総じて良い作品と言える。
このブログではこれまで、日曜劇場の作品に対して「シナリオ・コンクールに出てくるような作品」という評をよくしてきたが、考えてみると、日曜劇場のドラマは多くが似たような(「シナリオ・コンクール風の」)テイストを持っており、要は、かつてシナリオ・コンクールなどでアマチュア・ライターが描いていた世界、あるいは目指していた世界自体が、日曜劇場の影響を大いに受けていたのだと考えるべきなのかも知れない。この作品も「シナリオ・コンクール風」のドラマである。ただし完成度は高く、ドラマの中で一切破綻がないのは、さすがにトップ・プロの作品である。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『煙が目にしみる (4)、(5)(ドラマ)』竹林軒出張所『父の詫び状(ドラマ)』竹林軒出張所『神様の女房 (1)〜(3)(ドラマ)』竹林軒出張所『経世済民の男 高橋是清(ドラマ)』