太平記 (4)〜(27)(1991年・NHK)
原作:吉川英治
脚本:池端俊策、他
演出:佐藤幹夫、他
出演:真田広之、緒形拳、高嶋政伸、片岡鶴太郎、勝野洋、児玉清、フランキー堺、沢口靖子、樋口可南子、宮沢りえ、大地康雄、柄本明、陣内孝則、武田鉄矢、根津甚八、藤村志保、柳葉敏郎、片岡孝夫
ワン・オブ・ザ・ベスト大河ドラマ 現在NHK-BSプレミアムで、91年に放送されたNHK大河ドラマ、『太平記』が放送されている。『太平記』は、歴代の大河ドラマの中ではかなりよくできている方で、内容も充実している。何より主人公の足利尊氏が、理想主義を貫こうとしながら、周囲との間でいろいろと軋轢が生じ、理想と現実のはざまに立たされるあたりが、ストーリーとしてよくできていると言える。
ドラマで描かれる舞台は、鎌倉時代末期、北条氏の御内人が幕府を牛耳って、御家人たちの反感を買うあたりから、鎌倉幕府の崩壊、建武の新政、室町幕府樹立、観応の擾乱あたりまでが描かれる。今回は、当初再放送されているのを知らなかったため、第3回まで見損ねて第4回目の『帝 ご謀反』から見た。現在見ているのは、第27回『公家か武家か』 までで、建武の新政が始まったあたりである。武士が建武政権に反感を抱き始める過程が描かれる(現時点で放送は31回目まで終わっている)。
大河ドラマらしい大げさな表現も多く、多少白ける部分もあるが、よくわかりにくい時代背景を非常に具体的にわかりやすく描ききっている点が評価される。またそれぞれのキャラクターの性格付けもよくできていて、新田義貞の位置付けなどもわかりやすくなっている。何よりキャスティングが絶妙で、特に尊氏の真田広之、北条高時の片岡鶴太郎が抜群である。後醍醐天皇の片岡孝夫もノーブルで良い。猿楽の花夜叉一座の存在はドラマの上で必要かどうか微妙だが、吉川英治の原作にあるのであれば致し方あるまい。ただ、足利直冬の存在を考えると、直冬の母、藤夜叉(宮沢りえ)の存在は欲しいところで、そのあたりはうまく辻褄が合っているんだが、ドラマの進行上、どうも余計な存在ではないかとも感じてしまう。
新田義貞は、少々優柔不断でなかなか面白いキャラクターなのだが、序盤、萩原健一が演じていたにもかかわらず途中から根津甚八に変わっていたのは残念な部分である(萩原健一は病気で降板したらしい)。とは言え、根津甚八の義貞は悪くない。また武田鉄矢の楠木正成も律儀な性格が描き出されていて、魅力的な良いキャラクターである。ついでに言えば、得宗家の長崎円喜(フランキー堺)や金沢貞顕(児玉清)も、人間くさい実に味わい深いキャラクターである。
この後、室町幕府が打ち立てられ、高師直(柄本明)と足利直義(高嶋政伸)の対立が始まるという具合に進んでいくわけで、ドロドロした人間関係が面白味を増していく(
竹林軒出張所『太平記 (28)〜(49)(ドラマ)』を参照)。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『太平記 (28)〜(49)(ドラマ)』竹林軒出張所『太平記 (上)(中)(下)(本)』竹林軒出張所『観応の擾乱(本)』竹林軒出張所『源頼朝像 沈黙の肖像画(本)』竹林軒出張所『風と雲と虹と 総集編(ドラマ)』竹林軒出張所『炎立つ 総集編 (1)(ドラマ)』竹林軒出張所『黄金の日々 (1)〜(3)(ドラマ)』竹林軒出張所『草燃える 総集編(ドラマ)』竹林軒出張所『平清盛 総集編(ドラマ)』竹林軒出張所『花の生涯 (1)(ドラマ)』竹林軒出張所『徳川慶喜 総集編(ドラマ)』竹林軒出張所『獅子の時代 総集編(ドラマ)』竹林軒出張所『坂の上の雲 (1)〜(13)(ドラマ)』竹林軒出張所『麒麟がくる (6)〜(44)(ドラマ)』竹林軒出張所『光る君へ(ドラマ)』