日曜劇場 春のささやき(1980年・北海道放送)
脚本:市川森一
演出:長沼修
出演:根津甚八、南田洋子、伊藤蘭、富田耕司、口沢貞一
よく練られた文学的なストーリー 小樽近郊の塩谷というローカル駅を舞台に、若い駅員(根津甚八)の2日間の出来事を描くドラマ。北海道のローカル駅が舞台で主人公が駅員ということになると
『鉄道員(ぽっぽや)』を思い出す(舞台も何となく似ている)が、あれよりも内容的には充実している。
この駅員が、恋人(伊藤蘭)との間で、結婚のことで少し行き違いがあったりして関係が悪くなっているときに、中学時代の音楽教師(南田洋子)と駅でばったり会う。この教師、若い頃にこの駅員に大きな影響を与えているのだが、実は夫との離婚を考えて家出してきたと言う。憧れの存在だった恩師が実は必ずしも幸せではなくいろいろと悩みを抱えているという事実に、主人公が直面するというそういう話である。タイトルの『春のささやき』はシンディングという作曲家の同名タイトル作品からとったもので、このドラマでも重要なモチーフに使われている。
2つのエピソードが絡み合いながらも、適切なところに収斂していくあたりがストーリー的にはよくできていて、小品ドラマとしては秀作の部類に入る。よく練られた文学的なストーリーと言える。ワケありの南田洋子や、少し強気の伊藤蘭もなかなか魅力的である。根津甚八のセリフが聴き取りにくかったのが難点と言えば難点。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『日曜劇場 林で書いた詩(ドラマ)』竹林軒出張所『日曜劇場 ダイヤモンドのふる街(ドラマ)』竹林軒出張所『日曜劇場 天使を乗せたタクシー(ドラマ)』竹林軒出張所『鉄道員(ぽっぽや)(映画)』竹林軒出張所『グッドバイ・ママ (1)〜(11)(ドラマ)』竹林軒出張所『花祭(ドラマ)』