京都・祇園祭 至宝に秘められた謎
(2014年・NHK)
NHK-BSプレミアム ザ・プレミアム
祇園祭「プチ」大全
祇園祭といえば、京都の夏の風物詩で、山鉾巡行が有名だが、(僕を含めて)ほとんどの人は山と鉾の違いさえ知らず、(僕の場合特に)そもそもあの祭自体、何が面白いのかよくわからない。僕自身は、学生時代、祇園祭にバイトで参加したにもかかわらず(山鉾巡行ではなく神輿担ぎだった)、祇園祭についての知識はほとんどない。恥ずかしい限りである。
だが実は、あの山と鉾に飾られている絨毯やタペストリー(「懸装品」というらしい)は、多くが海外の古い品物で、江戸期に輸入された高級品であるということなのだ、このドキュメンタリーによると。ということで、このドキュメンタリーでは、そのうちの数点について、その出所を調査し、なぜそれが京都の町衆にもたらされたかを解明するんである。
まず最初に、いろいろな山と鉾の紹介などがあって、祇園祭の基礎編が始まる。山と鉾の違いについても紹介されるが、一般的に鉾の方が大きいという程度の違いのようで、はっきりしたところはよくわからなかった、僕には。
その後いよいよ、本題である、山や鉾に飾られている美術品についての探求に移る。まず紹介されていたのは、鯉山(こいやま)のタペストリーで、なんでもこれはトロイア戦争をモチーフにしたものと言う。実はこれはベルギー産の品で、元々5枚セットの逸品だったが、それがオランダ商人を通じて徳川家に献上され、そのうちの1枚が、(徳川家に金を貸していた)京都の豪商に贈られたということが調査によって判明する。なかなか壮大な話で、当時の町衆の社会における位置付けなどもよくわかるようになっている。
続いて、さまざまな山鉾の懸装品が紹介された後、長刀鉾(なぎなたぼこ)の、梅をあしらった(いかにも風変わりな)絨毯の由来についても推理される。これについてはこれまで出所がわからなかったが、どうやら西域あたりではないかという結論がこの番組で出される。こうして、山と鉾に飾られている懸装品は、多彩でインターナショナルであるということにガッテンする。
他にも、大船鉾の復元について紹介されるなど、祇園祭の話題が続けざまに紹介される。なるほどこれだけの知識があれば、祇園祭の山鉾巡行や宵山も楽しめるようになるだろうと思う。
とは言っても、祇園祭と言えばやたらに暑い京都の夏を思い出すわけで、とてもじゃないが見物に行こうという気にはならない。宵山にしても、蒸し暑いだけでなく、大勢の人があふれかえっていて、不快指数200%だったという記憶しかない。したがって、こういう風にテレビを通じて眺めているのが一番ではないかと思う。近年では、博多祇園山笠同様、テレビで生中継までされているようだし……。テレビ鑑賞で祇園祭を楽しむためには、こういった祇園祭「プチ」大全と言えるような番組が、繰り返しになるが、大変価値が高いのである。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『外国人が見た禁断の京都(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『京都人の密かな愉しみ 夏(ドキュメンタリー)』