潮騒(1975年・ホリプロ、東宝)
監督:西河克己
原作:三島由紀夫
脚本:須崎勝弥
出演:山口百恵、三浦友和、初井言栄、中村竹弥、津島恵子、花沢徳衛、有島一郎、津島恵子、中島久之、丹下キヨ子、石坂浩二(ナレーション)
単純ではあるが気持ちの良い映画
三島由紀夫原作の同名タイトル小説の映画化。この原作、
『伊豆の踊子』同様、過去何度も映画化されている。ハッピーエンドの素朴な純愛ものであるため、百恵友和コンビの第2作として採用されたのもよくわかるという作品で、アイドル映画としては最適なストーリーである。
伊勢の神島の漁村を舞台にした物語で、若い男(三浦友和)と女(山口百恵)が見初め合い、いろいろと障害があるが、それをことごとく乗り越えて一緒になるという、ある意味単純な映画である。ただ、この二人が、実に健全かつ健康的で、誰でも好感を抱くような存在と来ている。当時の百恵-友和のイメージにピッタリで、このコンビにとっては最高の題材と言えるのではないかと思う。
監督は、『伊豆の踊子』に続いて西河克己で(この後も百恵友和コンビの映画をたびたび撮っている)、演出は正攻法。人間の善意が随所で描かれる他、結果的に主人公の恋愛の障害になってしまう人までも好ましく描いているために、見終わった後不快さが残らない。非常にさわやかな試聴後感になっている。
原作自体は発表当時、「三島らしくない」などといろいろ言われたようだが、三島の理想主義みたいなものが見えてきて、僕などはむしろ「らしい」という印象を持った。この映画については、原作の持つ理想主義的な要素が実にうまく描かれていて、僕自身は好感を持ったのだった。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『伊豆の踊子(映画)』竹林軒出張所『春琴抄(映画)』竹林軒出張所『風立ちぬ(映画)』竹林軒出張所『野菊の墓(ドラマ)』竹林軒出張所『ホワイト・ラブ(映画)』竹林軒出張所『古都(映画)』竹林軒出張所『炎上(映画)』