ブログトップ | ログイン

竹林軒出張所

chikrinken.exblog.jp

『伊豆の踊子』(映画)

伊豆の踊子(1974年・ホリプロ、東宝)
監督:西河克己
原作:川端康成
脚本:若杉光夫
出演:山口百恵、三浦友和、中山仁、佐藤友美、一の宮あつ子、浦辺粂子、石川さゆり、三遊亭小円遊、宇野重吉(ナレーション)

山口百恵の初めの一歩

『伊豆の踊子』(映画)_b0189364_22410548.jpg 山口百恵の主演映画第一作で、三浦友和とコンビを組んだ最初の作品。原作は、それまで有名女優が主演をたびたび務めてきた、川端康成の『伊豆の踊子』で、当時のホリプロの山口百恵に対する期待が伝わってくるようである。この映画の制作当時、山口百恵は、刺激的な歌詞の「ひと夏の経験」がヒットしブレークした直後で、この映画やこの後出演したドラマ『赤い疑惑』を経て、国民的アイドルになっていく。この映画の封切り当時、山口百恵のヌードシーンがあるとかないとかでかなり話題になった(小学生だった僕の周辺でも結構この話で盛り上がっていた)が、今見ると吹き替えのようである。というよりあまりに映像がぼんやりしていて、顔も特定できないし身体もよく見えない。そもそもティーンエイジャーを当て込んだ映画だったため、このあたりの処置は適切だったのかも知れない。
 映画自体は、割合単純なストーリーに終始している。原作のように主人公の一高(第一高等学校)の学生(三浦友和)の心的葛藤などはあまり描かれたりせず、純粋に一高生と旅芸人の踊り子(山口百恵)との恋物語に仕上げられている。プログラムピクチャーとしてはまずまずと言える。時間も1時間半程度と短く、さながら短編小説のようなお手軽さであった(原作は確かに短編小説なんであるが)。
 映像の多くはロケで撮影されているようだが、当時はまだ、自然の風景が周辺に残っていたようで、山道のロケも行えている。今はどこもかしこも道路が舗装されていて、こういうロケさえなかなかできなくなっていることを考えると、この映画は、時代劇のロケが可能だった最後の時代の作品と言えるかも知れない。またロケを多用しているために、風景が美しく切り取られていて、叙情性を感じさせる。
 キャスティングについては、当時歌手としてはもう一つ売れていなかった石川さゆり(山口百恵と同じホリプロであるために端役で出演したと思われる)が出演している他、山口百恵の歌の歌詞をたびたび担当していた作詞家の千家和也がチョイ役で出演しているあたりが見所か。三遊亭小円遊のスケベ親父ぶりもなかなか良かった。なおナレーションを担当しているのは、重鎮、宇野重吉……ではあるが、ナレーションはなくても良かったように思える。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『潮騒(映画)』
竹林軒出張所『春琴抄(映画)』
竹林軒出張所『風立ちぬ(映画)』
竹林軒出張所『ホワイト・ラブ(映画)』
竹林軒出張所『古都(映画)』
竹林軒出張所『野菊の墓(ドラマ)』
竹林軒出張所『伊豆の踊り子・温泉宿 他四篇(本)』
竹林軒出張所『雪国(本)』
竹林軒出張所『雪国 -SNOW COUNTRY(ドラマ)』

by chikurinken | 2020-08-07 07:40 | 映画
<< 『潮騒』(映画) 『日曜劇場 わかれ』(ドラマ) >>