日曜劇場 わかれ(1967年・北海道放送)
脚本:安岡章太郎、長谷部慶次
演出:守分寿男
出演:佐分利信、日下武史、林寛子、北林谷栄、木村俊恵
今のドラマではあり得ないほどの意欲作 1967年作の日曜劇場で、モノクロ作品。それどころか放送時のテレビ画面を8ミリで撮影したんではないかというような映像で、テレビ放送画面独特の乱れもある。このあたりは
『海はこたえず』と同様で、おそらく同じルート(北海道放送か)から提供されたものだと思われる。
夫婦関係と仕事に行き詰まった作家の男(日下武史)が取材と称して北の大地に足を踏み入れる。宿でなんということなく毎日を過ごしていたこの男が、土地の老人(佐分利信)、そして彼が育てている女児(林寛子)に出逢い、彼らに惹かれていくという展開の話。
作家の安岡章太郎が初めてテレビドラマを書いたものの、それについて主演の佐分利信が「この人物像では演じられない」と直談判しに行ったという逸話を持つドラマである。部分部分は確かにわかりにくい部分もあった(たとえば主人公の作家の男が妻から嘘つきと言われしきりに攻められているが事情がよくわからない)が、先住民のオロッコ(ウィルタ)が出てきたり(彼らの舞まで出てくる)、謎の老人が元戦犯だったりと、1時間ドラマとは思えないほどの濃密さである。昨今のドラマからは考えられない密度で、力が入った意欲作であることがよくわかる。
わかりにくさは多少あるが、それはそれとして見ていられるのは、出演俳優のうまさもある。劇団四季出身の日下武史、劇団民藝の北林谷栄に加え、ベテランの佐分利信という布陣は、なかなかに渋い。子役は、歌手デビューする前の林寛子で、オロッコの末裔を演じている。なかなか可愛い。
第22回芸術祭奨励賞受賞
★★★☆参考:
竹林軒出張所『日曜劇場 海はこたえず(ドラマ)』竹林軒出張所『日曜劇場 終りの一日(ドラマ)』竹林軒出張所『日曜劇場 アポイの休日(ドラマ)』竹林軒出張所『日曜劇場 羽音(ドラマ)』竹林軒出張所『判事よ自らを裁け(ドラマ)』竹林軒出張所『風になれ鳥になれ (1)〜(3)(ドラマ)』竹林軒出張所『手塚・石森アニメ/特撮ドラマ回顧』