ブログトップ | ログイン

竹林軒出張所

chikrinken.exblog.jp

『徳川慶喜 総集編』(ドラマ)

徳川慶喜 総集編(1998年・NHK)
原作:司馬遼太郎
脚本:田向正健
演出:富沢正幸他
出演:本木雅弘、石田ひかり、大原麗子、堺正章、岸田今日子、江守徹、佐藤慶、菅原文太、若尾文子、杉良太郎、清水美砂

元のドラマはよくできていたようだが
省略されすぎで面白味も半減


『徳川慶喜 総集編』(ドラマ)_b0189364_13064566.jpg 1998年に放送されたNHK大河ドラマ『徳川慶喜』の総集編。
 維新ものは多くの場合、新政府側から描かれるのが筋だが、このドラマは江戸幕府側、あるいは江戸庶民の視点で描かれているあたりが新しい。そもそも現在の歴史観が新政府側の視点を踏襲したものであり、あくまで新政府側の正当性を主張するものであるため、江戸は暗黒時代、江戸幕府は暗愚で無能という扱い方をされがちだが、明治維新の成功が偶然の賜物であったことはわかってきているし、革命の際に被害者を最小限に抑えることができたのも、幕府側の英明さの由縁であると考えることもできる。このドラマの原作は、司馬遼太郎の『最後の将軍 徳川慶喜』だが、(ほぼ)平和裡に政権を移譲した点を慶喜の功績とした上で、慶喜を主人公に設定したものと考えられる。このドラマでもそういう視点で一貫しているようである。
 オリジナルのドラマ自体は、あちこちにユーモアを交えたくすぐりのあるシーンが散見されて、ドラマとして面白く仕上がっているようだが、何せ総集編であり、あちこちが大幅にカットされている(しようがないが)。そのため、ドラマとしての味わいもオリジナルの半分以下というイメージである。それにあまりに間が跳ばされているため、諸事情の因果関係が見えてこない。なぜ慶喜が、鳥羽伏見の戦いの最中に急遽江戸に戻ったかも理由が明かされないままだった。慶喜を描くに当たってはこのあたりが一番の見所と思っていたため、はなはだ残念である。
 それからナレーションが、新門辰五郎の妻(大原麗子)の語りで行われるわけだが、これも何だかわざとらしく、あまり良い効果が出ているとは思わない。
 ただそういう難点はあるが、キャストがなかなか魅力的で、NHK大河ドラマとしてはできの良い部類に入るんではないかと思う。慶喜役の本木雅弘と慶喜付きの侍女役の岸田今日子の掛け合いが面白い上、新門辰五郎の娘役の清水美砂との掛け合いも絶妙である。ちなみに本木と清水の二人、『シコふんじゃった。』や『涙たたえて微笑せよ』でも共演していて、手の内知った者同士であるせいか、非常に良い雰囲気を醸し出している。杉良太郎の井伊直弼(面構えが似ている)や佐藤慶の永原帯刀も絶妙なキャスティングと言える。
 なおこの総集編は元々1時間×4回の枠で放送されたもので、DVD2枚に収録されている。
★★★

参考:
竹林軒出張所『風と雲と虹と 総集編(ドラマ)』
竹林軒出張所『炎立つ 総集編 (1)(ドラマ)』
竹林軒出張所『草燃える 総集編(ドラマ)』
竹林軒出張所『太平記 (4)〜(27)(ドラマ)』
竹林軒出張所『太平記 (28)〜(49)(ドラマ)』
竹林軒出張所『獅子の時代 総集編(ドラマ)』
竹林軒出張所『平清盛 総集編(ドラマ)』
竹林軒出張所『坂の上の雲 (1)〜(13)(ドラマ)』
竹林軒出張所『花の生涯 (1)(ドラマ)』
竹林軒出張所『光る君へ(ドラマ)』
竹林軒出張所『麒麟がくる (6)〜(44)(ドラマ)』
竹林軒出張所『涙たたえて微笑せよ(ドラマ)』
竹林軒出張所『決戦!鳥羽伏見の戦い(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『幕末史(本)』
竹林軒出張所『明治天皇〈一〉(本)』

by chikurinken | 2020-06-16 07:06 | ドラマ
<< 『日曜劇場 乙姫先生』(ドラマ) 『日本文学史 近代・現代篇〈一... >>