全貌 二・二六事件 最高機密文書で迫る
(2019年・NHK)
NHK-BS1 BS1スペシャル
愚か者がトップに就くシステムの弊害
1936年2月26日、陸軍の若手将校が、政府のすげ替えを行って天皇親政の新政府を作ろうと蜂起したものの、数日後に鎮圧された事件が、世に言う二・二六事件。実は当時、海軍が、この事件に(内外から)接して、詳細にことの経緯を記録していたらしく、その文書が近年になって世の中に出てきた。何でも海軍将校がずっと手元に保管しており、表に出さなかったというのだ。言ってみればこれにより「新事実」が明らかになったが、それを、再現ドラマを交えて再構成したのがこのドキュメンタリー。
前にNHKスペシャルで70分版が放送されたが、今回僕が見たのはBS1で放送された「完全版」(110分版)である。内容は概ね同じだと思う。
「新事実」と言えるのは、反乱軍に対して海軍が臨戦態勢に及んでいたこと、つまり陸軍対海軍の内戦が発生した可能性があること、それから陸軍大臣が反乱軍に対し共感するような態度を取っていたこと(恐ろしく無責任な阿呆大臣である)、昭和天皇が当初から断固鎮圧の方針をとっていたが陸軍の共感を得られにくかったこと、あたりか。当時の状況をリアルタイムに再現していたため、緊迫感もあってなかなかよくできていたが、「新事実」と言うほどのものなのか、にわかに判断しがたい。
また、当時事件に関わっていた生き残りの人々の生身のインタビューが何度か登場して、これは史料的価値が非常に高いものだが、この番組収録後、亡くなられた方も何人かおられるようで、言ってみれば、この番組が最後の証言ということになった。そういう点でもこのドキュメンタリーは貴重と言える。
反乱軍のスタンスは、我こそは正義であるため何をしても許されるべきという奢った態度で、連合赤軍やオウム真理教などの事件とも共通する。二・二六事件以降も似たような事件が繰り返されていることを考えると、やはり、そのときにしっかり総括すべき事件であったと思える。特に帝国陸軍、上層部の無責任さは呆れかえるばかり。愚か者がトップに就くようなシステム(現在のほとんどの日本の組織に見られるが)は、即刻廃止すべきだと考えを新たにしたのだった。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『テロルの昭和史(本)』竹林軒出張所『昭和史 1926-1945(本)』竹林軒出張所『ノモンハン 責任なき戦い(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『731部隊の真実(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『日本軍兵士 アジア・太平洋戦争の現実(本)』竹林軒出張所『日本のいちばん長い日(映画)』竹林軒出張所『連合赤軍 終わりなき旅(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『未解決事件File. 02 オウム真理教(ドキュメンタリー)』