あなたのアパートは大丈夫?
岐路に立つ投資用不動産ビジネス
(2020年・NHK)
NHK-BS1 BS1スペシャル
「土地有効活用」という名の新手の詐欺 土地のオーナーにアパートを建ててもらい、それを賃貸住宅会社が「一括借り上げ」して、毎月、家賃を一定額オーナーに提供するという、いわゆる「サブリース」というビジネスが存在する。
オーナーにとっては良い投資方法に見えるこの話、実際には、一定期間後、家賃保証が行われなくなったりして、オーナーの財政が立ちゆかなくなるというケースが多発している。元々は、東京近郊に土地を持つ地主が、手持ちの金や銀行からの融資を元手に、そこにアパートを建て(建築を請け負うのは賃貸住宅会社)、それをその会社が一括で借り上げるという形態にし、部屋分の家賃を毎月オーナーに納めるというビジネスモデルである。賃貸住宅会社は、建築の請負と賃貸で利潤が得られ、オーナー側も、土地を有効活用してそこから利潤を上げられるという触れ込みで始まったらしいのだが、ましかし、うまい話にはどこか問題があるもの。特にこのビジネスモデルは、アパートがすべて賃貸され埋まっていれば問題ないんだろうが、実際、少子化傾向で空き家が増えている現在、賃貸物件がすべて埋まるなどということはなかなかない。そうすると、住宅メーカー側も、損をしながらそのままオーナーに家賃保証額を納め続けるなどということはあり得ないのである。実際、ある期間が過ぎたら、唐突に家賃保証額を減額されてしまい、オーナーが銀行の支払いさえできなくなるという状況になる。
このビジネスモデルだが、元々は、超低金利政策のために金を必要以上に貸さなければならなくなった銀行と、儲けを生み出したい賃貸住宅会社の過当競争のために生み出されたもので、銀行も住宅会社もその社員が大変な締め付けを受けた結果、無茶な投資先開拓に走った結果が今の状況らしい。結局、この無茶なプランで損をさせられるのは、オーナーになった一個人で、うまい口車に乗せられて契約したものの、借金が返せず途方に暮れているという人々が、現在かなり存在する。このビジネスモデル、どこかコンビニビジネスを彷彿させるが、いずれにしても一番損をするのは、末端の契約者である。コンビニもサブリースも一種の詐欺ではないかと感じてしまうが、こういう行為がまかり通っているのが現在の日本なのである。この問題については、1980〜90年代のバブル期を思い起こさせるような土地を利用した(一種の)詐欺とも言え、問題の根は相当深い。
ちなみにこの問題、少し前にスルガ銀行のシェアハウス投資に絡む事件で明らかになっているが、そのときも何だかわかったようなわからないような印象しかなく、しかもマスコミも(構造自体ではなく)銀行の責任追及で終始したために、僕にとっては不明瞭なままだった。だが、こういったドキュメンタリーで、状況をわかりやすく説明した上で、告発してくれると非常にわかりやすくなり、大変ありがたい。『クローズアップ現代』あたりで取り上げられそうなネタだが、あの番組も安倍政権側からいろいろと横やりが入っていたようで、こういう問題すらもなかなか報道できにくくなるというのが現状である。当然民放では、大手住宅会社が巨大スポンサーであることを考えると、この問題が取り上げられることも期待できない。せいぜいNHK-BSの1時間枠番組で細々とやるしかないわけで、それを思うとこの番組、非常に貴重なドキュメンタリーとも言える。なおこの番組で主に俎上に上がっていた住宅会社は、数年前欠陥住宅建設で話題になったレオパレス21である。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『廃虚になったマイホーム(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『コンビニオーナーになってはいけない(本)』竹林軒出張所『おそるべし、頭髪産業』竹林軒出張所『こんなメールが来た』