スエズ運河 メガ建築の大拡張
(2016年・仏Eclectic Presse / Anaprod)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー
モノにも歴史があるのだった
エジプトにあるスエズ運河は、完成してすでに150年が経つ。この運河の完成以前、ヨーロッパからアジアに渡航しようとすれば、喜望峰を迂回するルートしかなかったが、この運河が完成してからは、渡航の期間が1カ月も短縮されるなど、非常に有用な存在として世の中に認知されるようになった。
スエズ運河建設の実際は、フランスのレセップスが中心となって話が進められた。ただ、建設は始まったものの、実際の作業に当たっては、人海戦術を中心に行っていたこともあり、固い岩盤や掘削した土砂の処理などといった難題が次々に現れ、なかなか対処できなかった。工法が比較的未熟だったこともあり、作業は思うように進まなかったが、当時、土木工事の技術革新が進んでいたことが吉と出て、おかげでさまざまなテクノロジーを利用できるようになったことから、それをきっかけに工事が進んでいった。工法についてはこのドキュメンタリーで、CGを駆使してかなり詳細に紹介されるため、そのあたりは、土木マニアには堪らないかも知れない。
完成以降は、しばらくの間、海上交通の面で大きな存在感を示すが、第二次大戦後になると、中東戦争でイスラエルによって破壊されるなど、政治的な問題が起こり続けた上、運河の深さや広さの問題、渋滞の問題まで出てくるようになった。このような事情のために、21世紀になって運河の大拡張工事が行われることになった。これが完成したのが2015年で、こういったいきさつを紹介するのがこのドキュメンタリーである。
工法から始まって、工事上の問題点、政治上の問題など、スエズ運河について幅広く紹介する作品で、一つのトピックに対して多角的に検討していくというアプローチはなかなか良い。日本に住む人々にとっては、スエズ運河が日常の話題に上ることはあまりないが、しかしそれなりにさまざまな要素がそこには絡んでいて、モノにも歴史があるということを思い知らされる。個人的にはあまり関心のある話題ではなかったが、ドキュメンタリー自体がなかなかよくできていて、見ていて飽きることはなかった。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『中米パナマの憂うつ(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『佐久間ダム建設記録第一部、第二部(映画)』竹林軒出張所『巨大橋に挑む(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『サンド・ウォーズ(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『日本のインフラが危ない(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『ナイルの水は誰のものか(ドキュメンタリー)』