密猟者とレンジャー 二つの物語
(2018年・米Kasbe Films/The Documentary Group)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー
二人の皮肉な運命はドラマのよう
ケニアでは、野生の象を保護するために、密猟者に対して厳罰をもって対処している。そのためにレンジャーを多く採用し、密猟の取り締まりに当たらせている。レンジャーたちは相当乱暴で、容疑者を見つけたら殴る蹴るの暴行を働き、現行犯であれば射殺することもあるらしい。
ここに二人の男が登場する。二人は従兄弟同士で、子どもの頃から一緒に遊ぶ仲だった。一人(アサン)は密猟経験者だがその後レンジャーに転ずる。もう一人(エックス)は今でも密猟を続けている。しかし、経済状態は、皮肉なことだがエックスの方がはるかに良い。エックスは象牙取引でかなりの収益を上げているようだが、一方のアサンの方はレンジャーの給与が2カ月滞っているという状態で、妻から給与を早くもらってこいとせっつかれている。その上、アサンは、エックスから経済援助の申し出まで受けたりする有り様。
だがその後、自体が一変し、政府が密猟取り締まりに本腰を入れるようになって、エックスの密猟も行き詰まってしまう。つまり食えなくなってしまう。その結果、エックスはレンジャーに転ずるべく、資格を取るための研修を受け始めるのであった。一方のアサンの方は、レンジャー職に見切りをつけ、転職したというんだから、人生何がどうなるかわからない。
このドキュメンタリーは、この二人の活動に密着することで、複雑な国内情勢、ケニアの経済などに焦点を当てていく。二人の人生という視点でも面白いが、同時にその背景の矛盾を巧みに映し出す手法も見事なものである。また、密猟の現場や密猟取り締まりの現場にも同行取材しており、迫力ある映像も秀逸である。主人公二人の皮肉な運命はドラマのようでもある。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『絶滅へのギャンブル(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『知られざるナミビア(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『『エリックとエリクソン』についての告知』