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竹林軒出張所

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『愛と死をみつめて』(映画)

愛と死をみつめて(1964年・日活)
監督:斎藤武市
原作:河野實、大島みち子
脚本:八木保太郎
出演:吉永小百合、浜田光夫、笠智衆、内藤武敏、宇野重吉、北林谷栄、ミヤコ蝶々、笠置シヅ子、初井言栄


難病で逝く人と送る人の悲しみ

『愛と死をみつめて』(映画)_b0189364_20543098.jpg 1964年のベストセラー、『愛と死をみつめて』の映画化作品。
 『愛と死をみつめて』は、他にもドラマになった他、同名タイトルの流行歌もある。元々は、河野實と大島みち子の往復書簡を河野實が書籍化したもので、若くして軟骨肉腫という難病で死んだ大島みち子が、言ってみれば主人公である。大島みち子と河野實は互いをミコ、マコと呼び合う間柄で、遠距離恋愛の関係にあった。河野は当時中央大学の学生、大島は同志社大学の学生だったが、大島は入院治療のために退学する。その後、河野が病院に通ったり、あるいは手紙や電話で始終連絡を取り合うという関係だった。
 言ってみれば難病恋愛ものの走りで、『赤い疑惑』とか『世界の中心で、愛をさけぶ』とかのオリジナル、しかも実話が元という作品であり、これが実話かと思って見ていると非常に辛くなるようなドラマである。
 この映画は、日活が、ゴールデンコンビの吉永小百合と浜田光夫をミコとマコに当てて映画化した作品で、演出は当時プログラムピクチャーをよく撮っていた斎藤武市。そのためかどうかわからないが、クサい演出が、特に序盤何度も登場する。たとえば吉永小百合が少しふざけて、浜田光夫が「コイツぅ」と言いながら額を突くなど、今ではコントの「ザ定番」として出てくるような演出が出てくる(しかも2箇所も!)。
 映画としてはそういった痛々しい箇所もあるが、ただ元が実話ということを考えると、若くして顔の半分を取り去りしかも不治の病で死んでいくミコとそれを見送るマコや肉親などの痛みはひしひしと伝わってくる。そのことを思うと、この原作を映画化した日活の企画の勝利と言うことができるかも知れない。
 印象としてはテレビ・ドラマ版(大空真弓、山本学主演)の方が優れているとも思えるが、しかしこの映画の吉永小百合は絶品で、キャスティングではこちらの映画に軍配が上がる。他のキャストも、笠智衆、宇野重吉、ミヤコ蝶々、笠置シヅ子と多彩かつ豪華で、そういう点でも見所が多い。初井言栄が演じる「分裂病」の女性も鬼気迫る演技で恐ろしかった。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『あっこと僕らが生きた夏(ドラマ)』
竹林軒出張所『君は海を見たか (70年版) (6)〜(8)(ドラマ)』
竹林軒出張所『君は海を見たか (1)〜(11)(ドラマ)』
竹林軒出張所『聖の青春(本)』

by chikurinken | 2019-12-24 06:53 | 映画
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