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竹林軒出張所

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『日本の面影』(3)〜(4)(ドラマ)

日本の面影(1984年・NHK)
第三話 夜光るもの
第四話 生と死の断章
脚本:山田太一
演出:中村克史、音成正人
音楽:池辺晋一郎
出演:ジョージ・チャキリス、檀ふみ、佐野浅夫、加藤嘉、杉田かおる、佐々木すみ江、小林薫、樋口可南子、柴田恭兵、真行寺君枝、田中健、伊丹十三、津川雅彦

山田太一畢生の傑作の1本

『日本の面影』(3)〜(4)(ドラマ)_b0189364_20322718.jpg ラフカディオ・ハーンの半生を描くドラマの後半。
 第三話「夜光るもの」では、セツと結婚し、セツの家族の家計を支えるようになる。だがやがて、松江の寒さが苦痛になり、セツの大家族を伴って熊本に移り、第五高等中学校に赴任する。一方で熊本にはあまり良い感情を抱かなかった。少しずつ「日本」から心が離れ始めるというふうに話が進む。劇中劇として登場する怪談は「雪女」で、真行寺君枝と田中健が出演。
 第四話「生と死の断章」では、ハーンとセツの間に子どもができるが、同時に、西洋化によって、自分の愛している日本的(あるいは江戸時代的と言う方がいいか)なものが失われつつある日本にうんざりし始め、帰国を考えるようになる。だが旧友の西田千太郎夫妻(小林薫、樋口可南子)との交流もあって考えを改め(彼らには日本にこそ自分の家族があると語る)、帰化することに決めて「小泉八雲」と名乗ることにする。その後、東京帝国大学に乞われて講師になるが、あわせて執筆活動も継続し、アメリカで著作が立て続けに出版される。近代日本に対して複雑な感情を抱きながらも、やがて54年の生涯を閉じるという流れになる。第四話で登場する怪談は、セツによって語られる「耳なし芳一」で、劇中劇の中で芳一を演じるのは小林薫。ハーンが訃報を聞いた西田千太郎の分身という描き方である。
『日本の面影』(3)〜(4)(ドラマ)_b0189364_20322849.jpg このドラマは全編を通じ、ラフカディオ・ハーンの目を通じて、失われつつある日本の美徳や美しいものを再発見するというコンセプトの作品である。これは、渡辺京二の著作、『逝きし世の面影』と共通するもので、この本はかつて読んだとき非常に感銘を受けたが、同じ主張はこのドラマでしっかりと行われている。だがこの本の出版が1998年で、『日本の面影』が1984年の作品であることを考えると、こちらのドラマがオリジナルということになる。あるいは渡辺がこちらのドラマに触発されてあの本を書いたのかというような穿った見方もしたくなるところだ。そのくらい、両者でテーマが共通していて、このドラマでそれが存分に表現されている。それを考えると、このドラマの先進性が窺えるだろう。
 また、ドラマとして見ても、すべての登場人物が実在感を伴い非常にリアルで、作品としての完成度がきわめて高いことに驚く。演出があまりにさらりとしているため、俳優たちの高度な演技に気付かないほどである。セツの親戚を演じる加藤嘉(頑固ジジイぶりが良い)や佐野浅夫(気遣いの人)は、他ではあまり見られない配役であり、しかも存在感が大きい登場人物で、実に見事。
 題材は地味目だが、完成度が高く、(放送当時新奇であっただろう)主張も明確で、ドラマ史に残る傑作と言える。山田太一畢生の傑作の1本である。
第17回テレビ大賞優秀番組賞、第21回ギャラクシー大賞受賞
★★★★

参考:
竹林軒出張所『日本の面影 (1)〜(2)(ドラマ)』
竹林軒出張所『新編 日本の面影(本)』
竹林軒出張所『美しき日本の面影(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『怪談(映画)』
竹林軒出張所『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その1(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その2(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『その時あの時の今 私記テレビドラマ50年(本)』
竹林軒『映画レビュー:「ラスト・サムライ」に見る「逝きし世の面影」』

by chikurinken | 2019-11-13 07:31 | ドラマ
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