キャピタリズム マネーは踊る(2009年・米)
監督:マイケル・ムーア
脚本:マイケル・ムーア
出演:マイケル・ムーア(ドキュメンタリー)
資本主義が民主主義を破壊している
米国社会を浮き彫りにするマイケル・ムーアの長編ドキュメンタリー。野放図で金融関係者のやりたい放題になっている米国の経済と政治が俎上にのる。
1981年にロナルド・レーガンが大統領になってから、金融関係者が政府の中枢に入り込むようになり、自分たちの都合の良いような経済政策を実施するようになった。そのためもあって多くの富が少数の人間に集中するようになり、それで富を蓄えた人々は、その富を利用してますます政治を自由に牛耳るようになる。
同時に、かつて中流層と言われていた人々が、このような「上流階級」から富を収奪されるようになり、徐々に財産を失うようになる。家を銀行から奪われ追い出されるというケースが横行し、借金で破産する(実質的には詐取と強盗にあう)人々も増える。労働者は低賃金で良いように使われ、不当な扱いを受ける。こういったアメリカの現状が、報告されるのである。
面白いモンタージュがふんだんに使われ、まったく飽きさせない工夫はさるもので、さすがマイケル・ムーアだと感じる。ただし例によって、金融機関に殴り込みに行くというようなパフォーマンスが最後にあり、こういう高揚した気持ちで映画を終わらせたい気持ちは伝わってくるが、少しばかりわざとらしさを感じる。こういう演出はもういい加減やめた方が良いんじゃないかと感じた。
とは言え、アメリカの過酷な現状が映し出され、同時にそれに対して異議を唱える人々が増えている状況が紹介されるのは、心動かされる。同時に、ルポルタージュとしてなかなかの作品であるとも感じる。最後の方に、現状に異議を唱える人々の支援を受けてオバマが登場するという展開になって、映画は終わるんだが、実際には、オバマ大統領は金融機関の暴走を止められなかった。製作から10年経った今見ると、そのあたりも見えてきて(この映画で描かれているわずかな希望さえ失われたように感じて)、逆に暗澹たる気持ちになる。とは言え、資本主義が民主主義を破壊している現状(現在も継続中)が赤裸々に描かれている点は、大いに評価に値する。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『シッコ(映画)』竹林軒出張所『華氏119(映画)』竹林軒出張所『マイケル・ムーアの世界侵略のススメ(映画)』竹林軒出張所『インサイド・ジョブ(映画)』 竹林軒出張所『マネー資本主義第4回(ドキュメンタリー)』 竹林軒出張所『悪夢のサイクル(本)』 竹林軒出張所『金融が乗っ取る世界経済 21世紀の憂鬱(本)』 竹林軒出張所『パーク・アベニュー 格差社会アメリカ(ドキュメンタリー)』