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竹林軒出張所

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『悪妻行進曲』(1)〜(12)(ドラマ)

悪妻行進曲(1977年・木下恵介プロダクション、TBS)
原作:木下恵介(企画)
脚本:宮崎晃、桜井秀雄
演出:鈴木利正、山田高道
出演:林隆三、大谷直子、木之内みどり、細川俊之、篠ヒロコ、植木等、森川正太、谷啓、岡まゆみ、松村達雄、沢村貞子、赤木春恵、南美川陽子、中嶋朋子

キャラクターたちに大いに親近感を抱く

『悪妻行進曲』(1)〜(12)(ドラマ)_b0189364_17122053.jpg 木下恵介プロ製作のホームドラマ。
 普通のサラリーマン(林隆三)が、1カ月の休暇を取って小説を書こうとするんだが、妻(大谷直子)や姑(沢村貞子)からの猛烈な反対に遭うというような話がメインのストーリー。義理の妹(木之内みどり)の応援があったり、学生時代からのプレイボーイの友人(細川俊之)、上司夫妻(谷啓、岡まゆみ)、隣人(植木等、赤木春恵、森川正太)らとの関わりがあったりして、話が進んでいく。
 このドラマ、40年前の初放送時にすべての回を見ているが、そのときの印象が強く、かなりの部分を記憶していた。たとえば、小説を書くために休暇を取るというエピソードには、小説を書くというのはそんなに労力がかかるものなのかと思った記憶がある。また主人公が小説執筆のために使っている極太万年筆も印象に残っている。さらに言えば、妻がしきりに作っている「パンが原料の造花」というのもこのときに初めて知って、今でも記憶している。最後のシーンで妹の涼子(木之内みどり)が、主人公の義理の兄が書いた小説(『悪妻物語』というタイトル)をこっそり読んで「お義兄さんがお姉さんのことを愛していることがよくわかった」と語るシーンも印象的で、記憶にしっかり残っていた。今回見直してみると、やはりこのシーンが最高のシーンであることがわかる。実はこのシーン、義兄に思いを寄せる妹の失恋のシーンにもなっていて、失意の場面を演じる木之内みどりが大変魅力的である。
『悪妻行進曲』(1)〜(12)(ドラマ)_b0189364_17123067.jpg タイトルが『悪妻行進曲』であることからもわかるが、結構な悪妻たちが次々に出てくる。ただどの悪妻も憎めず、可愛げがあるのは、製作者の見識の高さゆえである。悪妻もそうだが、登場人物たちはどれも魅力的で、特に囲碁仲間の津村兵衛(松村達雄)は最高のキャラクターで、松村達雄の名優ぶりにあらためて感心させられる。松村達雄は我々世代にとっては馴染みのバイプレイヤーであるが、昨今こういった役者がいないため、こうやってあらためて見ると、その名演にうならされる。主人公に近い頑固老人という役割は、松村達雄お得意のキャラだが、他にも森川正太の浪人は『俺たちの旅』のはまり役だったし、赤木春恵の校長先生、谷啓の課長などもこの後他のドラマ(『3年B組金八先生』)や映画(『釣りバカ日誌』)で使われるキャラクターである。このドラマのキャスティングが他の作品に影響を与えているとも言えるわけだが、つまるところ、このドラマ自体、当時、業界関係者にそれなりの注目を集めていたのかも知れない。
『悪妻行進曲』(1)〜(12)(ドラマ)_b0189364_17122782.jpg こういったホームドラマは、大した事件が起きないものだが、それでも非常に楽しく、特にキャラクターたちに大いに親近感を抱くことができる。今でもこういうドラマがあれば良いのにと思うがどうだろうか。
 なお、このドラマ、第2回以降、毎回冒頭に、出演俳優が、撮影スタジオの雰囲気溢れる場所(カメラの側や大道具の裏側など)で、キャラクターになりきって、視聴者に語りかけるように前回までの話をまとめるという趣向がある。最初は少し戸惑うが、なかなか凝った演出で面白いと思う。こういう趣向も含め、非常に質の高いホームドラマであると、今見直してみても思う。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『二人の世界 (1)〜(26)(ドラマ)』
竹林軒出張所『3人家族 (1)〜(13)(ドラマ)』
竹林軒出張所『それぞれの秋(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 風前の灯(ドラマ)』

『悪妻行進曲』OP主題曲



by chikurinken | 2019-10-21 07:11 | ドラマ
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