凍りの掌 シベリア抑留記
おざわゆき著
小池書院
絶望や希望の描写が秀逸
ドラマ、
『お父さんと私の“シベリア抑留”』で紹介されていたマンガで、敗戦後の日本兵のシベリア抑留を描く作品である。モデルになっているのは著者の父で、父からの聞き語りを基にしたものである。
シベリア抑留についてはあちこちで語られているようだが(僕自身は映画『人間の條件第六部』〈
竹林軒出張所『仲代達矢が語る 日本映画黄金時代(本)』を参照〉のイメージが強い)、関心のある人は別にして、一般人のところにはなかなか届いていない。僕自身も事実としては知ってるつもりであったが、今回このマンガで目にしたシベリア抑留の実態については、これまでよく知らなかったわけで、本書で描かれる具体的な描写は、かなりの衝撃を伴って迫ってきた。著者も書いているが、すでに経験者が鬼籍に入り少なくなりつつある今、なるべく早く記録として残しておかなければ、結局この歴史自体がないものにされてしまう危険性がある。そういう意味でも、こういった形でマンガ化したのは大変立派な功績である。
マンガ自体は、かなり省略化された(かわいらしい)絵で、多少の物足りなさは感じるが、しかし全編丁寧に描かれているのは確かで、当時の状況を再現しようという熱意は十分伝わってくるし、実際に十分再現できている。(本書のテーマである)絶望や希望もしっかり表現されており、俘虜記の傑作の1つと言っても良い。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『お父さんと私の“シベリア抑留”(ドラマ)』竹林軒出張所『ひねもすのたり日記 (1)〜(3)(本)』竹林軒出張所『円生と志ん生(演劇)』竹林軒出張所『仲代達矢が語る 日本映画黄金時代(本)』竹林軒出張所『俘虜記(本)』竹林軒出張所『コミック昭和史 第5巻、第6巻、第7巻、第8巻(本)』竹林軒出張所『野火(映画)』