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竹林軒出張所

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『早春スケッチブック』(9)〜(12)(ドラマ)

早春スケッチブック (9)〜(12)(1983年・フジテレビ)
脚本:山田太一
演出:富永卓二、河村雄太郎
出演:鶴見辰吾、岩下志麻、山崎努、河原崎長一郎、樋口可南子、二階堂千寿、荒井玉青

そして大団円で終息に向かう

『早春スケッチブック』(9)〜(12)(ドラマ)_b0189364_19273015.jpg 望月家に騒動をもたらしている元カメラマン、沢田(山崎努)の病状が悪化していく。望月家の人々と沢田の恋人(樋口可南子)は、それに同情を示して沢田の元を訪れるが、さらには望月家の子ども達にしきりに絡んでいた不良少女(荒井玉青)までが毎日沢田の家を訪問するようになる。沢田は、当初見せていた攻撃的な側面を見せなくなり、何だかしおらしくなって、ちょっとばかり拍子抜けである。そしてやがて収束に向かっていくという展開になる。例によって最後は大団円で終息するという結果になる。
 沢田が死の恐怖で弱みを見せるあたりはなかなか良い描写だが、最後に物わかりが良くなってしまうのは少々腑に落ちない。とは言うものの、破綻はなく整合性はとれている。
 このドラマはなにしろ、それぞれの登場人物が非常にリアルで、性格もしっかり描きわけされていて、実在の人物のような存在感がある。こういったあたりが、このドラマの特質である。他人(血縁関係のあるものもあるが)同士が、お互いの生活に介入し合い、そこに人のぶつかり合いが生じてドラマが生まれる。この当時のドラマ、特に山田太一作品にはそういうものが多いが、それがごく自然に展開するため、違和感を感じることがない。このあたりが山田ドラマの大きな魅力であり、すごさなんだろうなと、このドラマを見ながらあらためて考えた。ただやはり最終回の展開は、どうにもいただけない感じがして、最後までモヤモヤが残った。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『早春スケッチブック(1)〜(4)(ドラマ)』
竹林軒出張所『早春スケッチブック(5)〜(8)(ドラマ)』
竹林軒出張所『「早春スケッチブック」、「夕暮れて」など(ドラマ)』
竹林軒『批評選集:ドラマ - 山田太一』
竹林軒出張所『時にはいっしょに(1)〜(11)(ドラマ)』
竹林軒出張所『沿線地図(1)〜(15)(ドラマ)』

by chikurinken | 2019-06-22 07:27 | ドラマ
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