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竹林軒出張所

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『わが青春のとき』(2)〜(8)(ドラマ)

わが青春のとき (2)〜(8)(1970年・国際放映、日本テレビ)
原作:A・J・クローニン
脚本:倉本聰
演出:高橋繁男、今井雄五郎
音楽:宇野誠一郎
出演:石坂浩二、樫山文枝、塚本信夫、小栗一也、笠智衆、岩本多代、大滝秀治、左時枝、下元勉

窮屈な世界にもがきながらも
自分を通していく姿が魅力的


b0189364_18494145.jpg 1970年に日本テレビで放送されたドラマで、原作はクローニンというスコットランドの作家の作品(『青春の生きかた』)。脚本は倉本聰。
 第1回目を見た段階で大学の医局の閉鎖性をテーマにしたドラマだと思っていたが、それは序盤で終わった。風土病である首木病の研究に没頭していた若い研究者(石坂浩二)は、それが原因で医局の教授と対立し大学をクビになるわけだが、その後は診療所を渡り歩きながらも、自分の研究に邁進する。同時に、研究のせいで診療所の仕事をクビになったり、好きな女性(樫山文枝)とも別れたりして(彼女を取るか研究を取るかみたいに二者択一を迫られたりする)、いろいろなものを失う。まさに青春、まさに若気の至りで、タイトルがそのテーマを物語っている。背景にあるのは医学界の閉鎖性であるが、「すべてを犠牲にしても自己実現に突き進む若者」という構図がテーマになっている。主人公には厳しい現実が次々に襲いかかってきて、ストーリーとしても意外性のある展開になる。よくできたストーリーだと思う。
 また映像がかなり大胆で、いろいろと実験的なショットが出てくる。フォーカスを近景、遠景で交互に変えていくというような映像は当時一般的だったのかあまり憶えていないが、今見ると斬新にも思える。イメージ映像も多彩で、撮影監督がかなりがんばっているという印象である。
 キャストは前にも書いたようにかなり地味で、顔は見たことがあるが名前を知らないというバイプレーヤー俳優が多く出演している。有名なのは主役の2人と、あとは笠智衆と左時枝ぐらいか。大滝秀治が1回だけゲスト的に出て来るが、この頃の大滝秀治はそれほど名前のある役者ではなかったはずで(彼の名前が売れるようになったのは『前略おふくろ様』以降だと思う)それを思うと地味度も一層増す。もっとも、どの役者も皆うまく、派手さがないとしてもまったくドラマの上では構わないわけだ。とは言うものの、主演の2人は直前の大河ドラマ『天と地と』で主人公とその相手役を演じていたらしく、キャスティングの話題性は当時それなりにあったのかも知れない。
b0189364_18494595.jpg どの登場人物も医学用語を駆使し、本物の医学関係者のように見えるのも、演出の妙なのではないかと思う。特に笠智衆は、主人公の恩師の研究者(少し現実離れした変わった研究者)を好演していて実にお見事。奥村チヨが好きなどという遊びの設定も面白い。奥村チヨをはじめとして、当時の流行歌があちこちで流れるのも懐かしさを感じさせる。
 時代のせいか、全体的に展開が遅めで、今の観点から見ると少々いらだたしい部分もあるが、後半は一気に話が流れていき、映像の斬新さもあって、なかなか見せるドラマになっている。若者が窮屈な世界の中でもがきながらも自分を通していく姿は魅力的に映る。題材も目新しいものだし、予想できないストーリー展開も素晴らしい。一見地味で、最初は見続けるのに少々骨が折れる気もするが、見始めたら止められなくなる。あまり有名な作品ではないが、相当な快作と言える。なお、後の倉本聰作品に見られるような「倉本色」はまったくない。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『わが青春のとき (1)(ドラマ)』
竹林軒出張所『君は海を見たか (70年版) (6)〜(8)(ドラマ)』
竹林軒出張所『君は海を見たか (1)〜(11)(ドラマ)』
竹林軒出張所『ライスカレー (1)〜(13)(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 ああ!新世界(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 ひとり(ドラマ)』
竹林軒出張所『聞き書き 倉本聰 ドラマ人生(本)』

by chikurinken | 2019-05-04 07:49 | ドラマ
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