映画 聲の形(2016年・京都アニメーション)
監督:山田尚子
原作:大今良時
脚本:吉田玲子
声の出演:入野自由、早見沙織、悠木碧、小野賢章(アニメーション)
重いテーマと美しい映像 障害者の差別、学校でのいじめ、生きづらさなどをテーマにしたアニメーション映画。
小学生時代、聴覚障害の転校生、西宮硝子をいじめ、その後それが原因で逆にクラス全員のいじめに遭うようになった少年、石田将也の物語。この石田少年、小学校から続くいじめのため、高校生になっても周囲と溶け込めず孤立した生活を送っていたが、あるとき西宮に再会し、そこから少しずつ人生が変わっていくというようなストーリーである。
学校での生きづらさや閉塞感、人間の成長などが描かれ、テーマが非常に意欲的である点に目を瞠る。登場人物がステレオタイプである点や一部行動がきわめて唐突である点が少々残念ではあるが、こういう重いテーマに積極的に取り組んでいるのは評価に値する。また、何より映像が非常に美しい。日本のアニメーションの水準の高さを見せつけられるようである。プロットもよくできていて、見ていて飽きさせないストーリー展開はなかなかのものである。
この映画、興収が23億超えたらしく、かなりのヒットになった。こういった重いテーマでも、アニメーションであれば若い人々が見るということなのか、それとも若い層が(いじめという)テーマを身近なエピソードと捉えたのか、そのあたりはわからないが、それでも日本の興業の可能性を垣間見せられた気はする。個人的には『けいおん!』を彷彿させる、いかにもアニメ少女みたいなキャラクターがあまり好きではないが、こういう要素も実は集客の要因になっているという可能性はある。
日本映画批評家大賞アニメーション部門作品賞受賞
★★★☆参考:
竹林軒出張所『名もなく貧しく美しく(映画)』竹林軒出張所『典子は、今(映画)』竹林軒出張所『この世界の片隅に(映画)』