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竹林軒出張所

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『日本フィルハーモニー物語』(映画)

日本フィルハーモニー物語 炎の第五楽章(1981年・エヌ・アール企画)
監督:神山征二郎
原作:今崎暁巳
脚本:神山征二郎、今崎暁巳
出演:風間杜夫、田中裕子、内藤武敏、浜田光夫、菅野忠彦、中野誠也、長塚京三、鈴木ヒロミツ、長谷直美、日色ともゑ、三谷昇、渡辺暁雄、小池朝雄、下元勉、ジェリー藤尾、殿山泰司、前田吟、佐藤オリエ、高橋克典、井川比佐志、志村喬

豪華なのは入れ物だけ

b0189364_14455108.jpg 1971年、日本フィルハーモニー交響楽団が、スポンサーのフジテレビと文化放送から支援打ち切りを通告され、それに対して楽団員が労働組合を結成して対抗する。これが世にいう「日フィル争議」で、その争議をモチーフにした映画がこの作品。原作は今崎暁巳という人のルポルタージュ『友よ! 未来をうたえ』という本である。
 監督は正攻法の地味な映画ばかり撮っている神山征二郎で、この映画も予想通り正攻法で地味なドラマ。当然、日フィル争議がストーリーの核になり、組合とスポンサーの東洋放送とのもめ事、さらには日本フィルが再建していく様子が描かれる。主人公は日本フィルのヴァイオリニスト樺沢昇(風間杜夫)で、恋人の茂木伸子(田中裕子)との恋愛がサブプロットになる。さらに同僚のチェリスト(内藤武敏)の死なども盛り込まれるが、正直ドラマ的な面白さはあまりなく、あってもありきたりなもので、2時間見続けるのがかなり苦痛な作品である。今回僕が見たのは、日本映画専門チャンネルの放送だったが、現時点でDVD化されておらず、テレビ放送もこれまで行われなかったらしい。僕も存在すら知らなかったし、そもそも日フィル争議についてもよく知らなかった。
 企業や自治体が金銭的に厳しくなると、まず最初に見直されるのが文化事業で、そのため今でも似たような問題はあちこちで起こっている。少し前にも、大阪の日本センチュリー交響楽団が補助金カットで揉めた(結局カットされた)し、文楽協会も補助金カットを示唆され問題になった。そのため、オーケストラだけに限っても映画やドキュメンタリーでよく取り上げられている。だから単に争議の現場だけを劇映画にしても面白味はなかなか生まれない。『オーケストラの少女』みたいに破天荒な映画にするか、さもなければ、人間の内面に迫るなどの要素がなければドラマとしては魅力に欠ける。この映画の最大の難点はそこで、どの登場人物もあまり人間としての存在感が見受けられず、単に行動の主体として登場するだけであるため、面白味がないのである。
b0189364_14455648.jpg 映画界でもかつて東宝争議などという似たような労働問題があり、監督の神山征二郎も多少の関わりを持っていたらしく、そういう点でこの日フィル争議に共鳴したんだろうが、思い入れだけでは面白い映画にならない。キャストは今見ると豪華(しかもほとんどはチョイ役)で、よくこれだけの俳優を集めたなと思うが、仏作って魂入れずみたいな内容の乏しい作品になってしまったのははなはだ残念。最後にコンサートのシーン(『新世界』が演奏される)があり、客が一様に感動するシーンで締めるというのも音楽映画らしいが、ありきたりと言えば実にありきたりである。
★★☆

参考:
竹林軒出張所『オーケストラの少女(映画)』
竹林軒出張所『オーケストラ!(映画)』
竹林軒出張所『名門オーケストラを救え(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『スラムのオーケストラ(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『日曜劇場 ああ!新世界(ドラマ)』

by chikurinken | 2019-02-12 07:45 | 映画
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