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竹林軒出張所

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『羅生門』(映画)

羅生門(1950年・大映)
監督:黒澤明
原作:芥川龍之介
脚本:黒澤明、橋本忍
撮影:宮川一夫
美術:松山崇
音楽:早坂文雄
出演:三船敏郎、京マチ子、森雅之、志村喬、千秋実、本間文子、上田吉二郎、加東大介

美術と撮影は超一流だが……

『羅生門』(映画)_b0189364_19053666.jpg ヴェネチア映画祭でグランプリを獲得した黒澤明の出世作。今回見るのは2回目。
 原作は芥川龍之介の(『羅生門』ではなく)『藪の中』である。ただし『羅生門』的な要素も主題(人間のエゴイズム)として組み込まれているし、何より舞台が平安京の羅生門になっている。そしてまた、この羅生門のセットがすばらしい。さすが大映!と感じさせる立派なものである。ちなみにこの映画、黒澤作品だが、東宝ではなく大映製作なのである。これだけ立派なセットを組んだにもかかわらず、ほとんどのシーンがロケで撮影されている。このあたりは結構な無駄に思え、製作責任者に対しては少し腹立たしく感じる。もっともこのロケのシーンについても、宮川一夫のすばらしい撮影でコントラストの効いた面白い絵面になっていて(少々やり過ぎな感もあるが)、しかも登場人物の息づかいが感じられるようなすばらしい映像になっている。
 ただ、これだけ立派な素材を揃えながらも、やはりなぜだかわからないが、途中流れが悪く感じる場面が多く、見ていてだんだん飽きてくる。それに原作は「藪の中」(真相がわからないことのたとえ)のはずであるにもかかわらず、杣売り(志村喬)がすべて種明かししてしまって、そのために面白味が極度に損なわれてしまっている。ストーリー上、最後までモヤモヤするのがそもそもの『藪の中』の面白さでありテーマだと思うんだが、ソフトランディングしてしまったために、他の登場人物の証言が、単なる見栄による嘘で片付いてしまって面白味もへったくれもあったもんじゃないという結末になってしまった。それに人間のエゴイズムがテーマになっているにもかかわらず、最後はつまらない黒澤流ヒューマニズムで片付けられていて、テーマが台無しになってしまっている。このあたりも原作を尊重するのであれば、不快になるようなエゴイズムを突きつけてほしかったと感じる。橋本忍の脚本にしてはちと陳腐だと思っていたんだが、今調べたところ、橋本忍のオリジナル脚本に黒澤明が加えた部分が、このヒューマニズムのシーンと種明かしのシーンだったらしい(ウィキペディア情報)。妙に頷いてしまう。
 今回見たのは、デジタル完全版というもので、リマスター処理が施されていた。そのため画面が非常に美しくなっており、宮川一夫の芸術的な映像も生きるというものである。そういう芸術性も随所に感じられるんだが、やはり流れの悪さや(おそらく黒澤改変による)プロットの陳腐さはいかんともしがたいと思う。原作、脚本、美術、撮影、音楽などどれもすばらしい素材が揃ったにもかかわらず、センスの悪い使い方のせいで台無しになった……という印象しか残らなかった。
1951年ヴェネチア国際映画祭サン・マルコ金獅子賞受賞
★★★

参考:
竹林軒出張所『地獄変・邪宗門・好色・藪の中(本)』
竹林軒出張所『羅生門・鼻・芋粥・偸盗(本)』
竹林軒出張所『今昔物語(上)(下) マンガ日本の古典8、9(本)』
竹林軒出張所『去年マリエンバートで(映画)』
竹林軒出張所『椿三十郎(映画)』
竹林軒出張所『用心棒(映画)』
竹林軒出張所『蜘蛛巣城(映画)』
竹林軒出張所『天国と地獄(映画)』
竹林軒出張所『デルス・ウザーラ(映画)』
竹林軒出張所『三度目の殺人(映画)』
竹林軒出張所『キャメラマンMIYAGAWAの奇跡(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『桜の森の満開の下(映画)』
竹林軒出張所『MIFUNE: THE LAST SAMURAI(映画)』

by chikurinken | 2018-12-14 07:05 | 映画
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