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竹林軒出張所

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『戦車の時代がやって来た』(ドキュメンタリー)

戦車の時代がやって来た
(2017年・仏IMAGISSIME/独LOOKS Film)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

機関銃→塹壕→戦車という過程で
大量殺戮の時代を迎える


『戦車の時代がやって来た』(ドキュメンタリー)_b0189364_18244103.jpg 第一次世界大戦が始まった1914年当時、ドイツ人もイギリス人もこの戦争が短期間で終結すると考えていたという。参加した兵士も、英雄的な考えにとらわれた志願兵が大半で(「クリスマスまでには戻ってくる」などと語った志願兵もいるらしい)、その事実が当時の一般的な考え方を反映している。ところがこの頃の戦争は、それまでヨーロッパ諸国で繰り広げられていた政治の道具としての戦争ではすでになくなっていた。一番大きいのは、機関銃などの近代兵器が実用化されたことであり、機関銃が主力になると敵陣に打って出るというような英雄的な戦い方ができなくなるため、塹壕を掘り、その中で敵の出方を窺いながら耐えるという戦い方になる。したがって戦闘は長期化し、武器をはじめとする兵站が膨大になり、結果として国力をかけた総力戦になってしまう。そのために第一次大戦は、当初の目論見から外れて長期化し、ヨーロッパ諸国は戦勝国も敗戦国も著しく疲弊することになった。これが第一次大戦の歴史的な評価である。
『戦車の時代がやって来た』(ドキュメンタリー)_b0189364_18244994.jpg 大戦が戦われていたとき、西部戦線(独仏国境)では、バルト海から地中海にまで達する長い塹壕が掘られた。この長い塹壕で向かい合った両軍は、この状況を打開するために、塹壕を突破できる新兵器の開発を始める。それが戦車である。周囲を装甲で覆い、敵からの攻撃に耐えながら塹壕を突破し、機関銃や大砲で敵兵を一掃するというコンセプトの車両である。フランスや英国で開発が進んだが、最初に実戦に投入されたのは、ソンムの戦いにおいてである。英国軍が戦場に新開発の戦車を数十台投入し敵軍に大いなる脅威を与えたが、完成度が低かったためにそのほとんどが途中でエンコし、使い物にならなかった。しかしそのポテンシャルについては両軍ともに大いに感じるところがあったようで、戦車は改良され(ルノーなどの自動車産業も協力したという)、やがて実践にどんどん投入されるようになる(ドイツ軍は、資材の不足により十分な量の戦車が作れなかったために、結局戦車投入競争に敗れたらしい)。こういった近代兵器と戦車の歴史が語られるのがこのドキュメンタリーである。戦車についても英軍のマークI戦車、リトル・ウィリー、フランスのルノーFT-17などが映像で紹介される。
 ドキュメンタリー自体は、少々尻切れとんぼの終わり方をし、続編があるかのような示唆が最後に出てくる(この後戦車の技術が近代農業に活用されソ連の計画経済を支えるというような表現がある)。実際この作品の原題が『AGE OF TANKS Ep.1』であるところを見ると、エピソード2以降の存在も当然考えられる。今回なぜにこれを単発ドキュメンタリーのようにして放映したかは不明だが、第一次大戦の特性を知る上で兵器を知ることは重要であり、戦車の存在がその後の大量殺戮に繋がったことを知ることも重要であるため、それはそれで有意義な番組だったとは思う。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『カラーでよみがえる第一次世界大戦(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『映像の世紀 第1集〜第4集(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『アメリカの新たな戦争 無人機攻撃の実態(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2018-12-02 07:24 | ドキュメンタリー
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