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竹林軒出張所

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『君は海を見たか』(1)〜(11)(ドラマ)

君は海を見たか (1)〜(11)(1982年・フジテレビ)
脚本:倉本聰
演出:杉田成道、山田良明
音楽:朝川朋之
出演:萩原健一、高橋恵子、伊藤蘭、田中邦衛、柴俊夫、六浦誠、小林薫、梅宮辰夫、下條正巳、平泉征、高岡健二

難病患者を家族に持つ人間の心理描写が見事

b0189364_18434264.jpg 若くして妻を亡くした仕事人間のサラリーマン(萩原健一)が主人公。現在小学生の子ども(六浦誠)がおり、家では妹(伊藤蘭)が母代わりで子どもの面倒を見ている。そういう状況で、子どもが病気で入院することになった。その後、子どもがウィルムス腫瘍という難病であることが判明。当初は、それでも仕事優先で邁進していたが、やがてそれが原因(上司の親心である)で大きな進行中のプロジェクトの担当から外される。はじめは子どもとの接し方が分からないなど(長いことまともに相手していなかったため)いろいろと壁に突き当たるが、徐々に子どもと接する時間が長くなり、心も通い合うようになる。余生3カ月と診断されているため、子どもの残りの人生を充実させようと奮闘するようになるというようなストーリー展開になる。ごく大雑把に言うとそういう内容だが、他にも主人公の再婚がここに絡む他、子どもを失うという事実を前にして狼狽する親の心情がうまく描かれていて、しかも子どもの教育の問題にも踏み込んでいる。そのため、中身はかなり充実している。
b0189364_18445923.jpg 実はこのドラマ、この10年以上前に日本テレビでも製作されているらしく、しかもその後映画化までされたため、この作品で3回目のドラマ化ということになる。言ってみればリメイクだが、『北の国から』でヒットを飛ばした半年後に、同じフジテレビの『金曜劇場』の枠で放送された作品であるため、かなり力が入っている。シナリオの完成度も高く、ドラマとしては割合ありきたりな「不治の病」テーマでありながら、悲劇にとどまらない奥深さが全編漂っている。さまざまな問いかけもあり、それは『北の国から』と共通するテーマであったりもするんだが、非常に意欲的という印象である。
 キャストは、『前略おふくろ様』の萩原健一と梅宮辰夫に『北の国から』の田中邦衛など。萩原健一は『前略おふくろ様』と違って落ち着いた演技で迫真である。梅宮辰夫の課長も異色の役(部下が休み返上で仕事に駆けずり回っているにもかかわらず、休日はきちんと取るような非会社人間)どころを淡々と演じていて好感が持てる。他にも、ゲスト的に小林薫、戸川純、水沢アキ、長谷川初範、大友柳太朗、ガッツ石松、芹明香らが単発で出てくるなど、キャストは結構豪華である。『中学生日記』で風間先生を演っていた湯浅実が医師として登場するのも新鮮である。
b0189364_18440142.jpg ドラマの中で使われている谷川俊太郎の詩『生きる』も大変効果的で良い。またテーマ曲のショパンのワルツ第10番(遺作)もうまい使われ方で感心する(朝川朋之の編曲も非常に良い)。同じ倉本聰作品の『風のガーデン』でもショパン(夜想曲第20番(遺作))をアレンジしたものが使われていたが、あれよりも数段上品で良い。全体に渡って(特に後半)隙のない佳作で、黄金時代の倉本聰+フジテレビの勢いを感じさせるドラマであった。今見てもあまり古さを感じさせないという点も、完成度の高さを反映しているのではないかと思う。もっとも病院で医師がタバコを吸ったりするのは時代だなーと思う。当時、このドラマが終わった後、同じ枠で放送されたドラマが山田太一の『早春スケッチブック』(これも死がテーマ)であったというのもすごい。金曜劇場、今考えると非常に豪華であった。
★★★★

追記:
 舞台美術家の妹尾河童が「アートディレクター」として名を連ねていて、どういう風にこの番組に関わっていたのかは詳しく分からないが、途中一瞬出てきた子ども部屋(ヨットのキャビン風)の透視図が彼の作であることは見てとれた。この子ども部屋の内装ももしかしたら彼がやったのかも知れない。

参考:
竹林軒出張所『前略おふくろ様(1)〜(26)(ドラマ)』
竹林軒出張所『ライスカレー (1)〜(13)(ドラマ)』
竹林軒出張所『川は泣いている (1)〜(4)(ドラマ)』
竹林軒出張所『聞き書き 倉本聰 ドラマ人生(本)』
竹林軒出張所『あっこと僕らが生きた夏(ドラマ)』
竹林軒出張所『「早春スケッチブック」、「夕暮れて」など(ドラマ)』

by chikurinken | 2018-11-23 07:42 | ドラマ
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