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竹林軒出張所

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『光と影を映す』(本)

光と影を映す
山田太一著
PHP研究所

本になるとこう変わる

『光と影を映す』(本)_b0189364_17314190.jpg NHK-BSでかつて放送された『100年インタビュー 脚本家 山田太一』を書籍化したもの。当初の危惧通り、やっぱり出た。内容についてはかつてこのブログでも紹介し、しかも内容についてもそのまま一部書き起こしたため、個人的にはあまり目新しさはないが、どういう風にまとめられているか興味があったため、今回読んでみた。
 元の番組、つまり『100年インタビュー』が非常によくできており、内容も充実していて面白かったため、この本の内容も推して知るべしで、内容的には非常に興味深い。あの番組を見られなかったが見たかったという人にとっては格好の素材と言える。
 今回は、語られた内容がどのように編集されているかというのが僕にとっての一番の関心事であったため、そういう視点で本書に当たったわけだが、僕が前回書き起こした部分と比較すると、出版用の録音の書き起こしというのがこういう風に行われるのかというのが非常によくわかる。山田太一によって語られた話が、この人の魅力を損なわない程度に変更された上でわかりやすく書き起こされている。その結果、非常に読みやすい文章になっている。僕が書いたときは一言一句ほぼそのまま取り上げたため、多少の読みづらさはある。ただあの独特の遠慮がちな語り口が入っているという面白さもある。僕としては自分で書き起こしたものの方が面白いと思うが、本としてそのまま書くのが良いとはおそらく言えないだろう(山田太一自身も、この原稿であれば、かなり手を入れるんじゃないかと思う)。その点で、非常に良い按配でまとまっている本と言える。
 ブログに掲載したのは、この本の8ページから39ページくらいまで、第1章から第2章までに相当する。テレビで放送されたものより本書に収録されている内容の方が多いが、これは放送時にカットされた部分だと思う。放送されなかった(と思われる)内容は他にもあちこちにあって、そういう意味では、あの番組を見た人もこの本を読む価値はあるということだ。いずれにしても良くまとめられていて、インタビュー本としては上出来であると思う。ただし本自体については、字がかなり大きいため、内容は薄目という印象である(なんせ1時間半の放送を本にしたんだから)。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『100年インタビュー 倉本聰(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『100年インタビュー ロナルド・ドーア(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『夢追い漫画家60年 (100年インタビュー)(本)』
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その1(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その2(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2018-11-22 07:31 |
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