ブログトップ | ログイン

竹林軒出張所

chikrinken.exblog.jp

『ルーツ』(1)〜(4)(ドラマ)

ルーツ (1)〜(4)(1977年・米)
 第1話 さらば母なる大地
 第2話 誇り高きマンディンカの戦士
 第3話 我が妻 我が娘
 第4話 愛する者たちの別離
原作:アレックス・ヘイリー
脚本:アーネスト・キノイ、ジェームズ・リー
演出:デヴィッド・グリーン
出演:レヴァー・バートン、ジョン・エイモス、タルマス・ラスラーラ、エドワード・アズナー、ルイス・ゴセット・Jr、ヴィック・モロー、ローン・グリーン、マッジ・シンクレア、ロバート・リード、レスリー・アガムズ、チャック・コナーズ、ベン・ベリーン、リチャード・ラウンドトゥリー

アメリカの黒人の血を辿る一大叙事詩

『ルーツ』(1)〜(4)(ドラマ)_b0189364_18094550.jpgネタバレ注意!

 アレックス・ヘイリーの『ルーツ』をドラマ化したもので、77年に全米でテレビ放送され大ヒットした作品。当時日本でも放送され、話題になった。僕自身も当時テレビで見て、おおきな感銘を受けた。原作はヘイリー自身の先祖数代に渡る歴史を描いたもので、アフリカのガンビアで捉えられ奴隷としてアメリカ大陸に連れてこられたクンタ・キンテからの苦難が描かれる。
 ガンビアのマンディンカ族の戦士の血を引く若者クンタ・キンテは、奴隷商人に捕まり奴隷船で米大陸に運ばれる。奴隷船の中では多くの奴隷たちが死んでいく(反乱で死んだ者もいる)。大陸に着くと、今度は奴隷として白人の農園主に売り飛ばされる。マンディンカ戦士としてのプライドを持ち続けるクンタは自由を求めて脱走を何度も試みるが、そのたびに捕まりひどい仕打ちを受ける。ここまでが第2話までで、主演は当時学生あがりだった新人俳優、レヴァー・バートンが務める。
 第3話はその9年後の話で、ここから主演はジョン・エイモスに変わる。成人後のクンタ・キンテ役である。主人公のクンタ・キンテは、再び脱走を試みるが捉えられ、罰として足先を切り落とされる。その後、別の農園主の元に売られて、そこで料理女のベルと知り合い、彼女と結婚し娘を授かる。そしてこの地で家族とともに生きることを決意するというのが第3話。
 第4話はさらに16年後。娘のキジーが話の中心になる。キジーはある問題から別の農園主に売られ、親子が引き離されることになる。その後、新しい農園主に手込めにされ男の子を産む。第4話の後半は、それからさらに18年後。息子ジョージが立派に成長し、闘鶏用の鳥番として主人の信頼を集めている。キジーの方は別の黒人男サムと良い仲になり結婚の約束もするが、結局彼の奴隷根性に愛想が尽きて結婚を解消する。キジーには父クンタ・キンテから引き継いだ自由な人間としてのプライドがあったのだった……というストーリー。
『ルーツ』(1)〜(4)(ドラマ)_b0189364_18095214.jpg 1話あたり90分だが、1話と2話が奴隷としてアメリカ大陸に連れてこられるまでのクンタ・キンテ、3話が奴隷として家族を持つクンタ・キンテ、第4話が娘のキジーという具合に、だんだんスパンが短くなる。この後の第5話と第6話で完結するわけだが、第5話がジョージの世代、第6話がその子どもの世代という具合に話が進んでいく。このドラマについて出演者やスタッフが一様に「saga(サーガ)」と呼んでいたが、まさしく奴隷としての生き方を強要された黒人の、その家系の百数十年を辿る叙事詩になっている。奴隷船での非人道的な扱いや農園での無情な売買などで虐げられる黒人たちの有り様がリアルに描かれて、見るのが辛くなるような厳しい映像が出てくる。これが当時の黒人たちの現実だったということが窺える(奴隷船の撮影ではエキストラの黒人が使われていたが、あまりに過酷で屈辱的だったためか80%のエキストラが翌日現れなかったらしい)。主人の機嫌を伺いながら生き、かと思うと突然気まぐれなひどい扱いを受けたりもする。しかも終始劣等な人間として扱われる。黒人側は(そして見る側も)終始、こういった理不尽な扱いに憤りながらも結局媚びながら生きるしかないということを思い知らされる。
 放送当時かなり話題になって実際にアメリカでの視聴率も高かったらしいので、当時の(白人を含めた)人々に与えたインパクトはかなりのものだったんではないかと思う。現在のように差別主義が跋扈する時代にこそ、こういう作品を大勢の人間が見た方が良いのではないかと感じる。
 なお、第1話、第2話あたりまでゲスト扱いでさまざまな有名俳優が出ているようだ(ほとんどの俳優については知らなかった)。僕がわかったのは、第1話のO・J・シンプソン(元フットボール選手)と第4話のスキャットマン・クローザース(ミュージシャン)くらいだったが、この2人、俳優の活動もやっていたため、アメリカ人にとってはあまり目新しさもなかったのかも知れない。O・J・シンプソンは、ドラマの中でも恐るべき俊足を見せていた。
プライムタイム・エミー賞作品賞受賞
★★★★

参考:
竹林軒出張所『ルーツ (5)〜(6)(ドラマ)』
竹林軒出張所『キング牧師とワシントン大行進(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『人種隔離バスへの抵抗(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『グローリー 明日への行進(映画)』
竹林軒出張所『クー・クラックス・クラン 白人至上主義結社KKKの正体(本)』

『ルーツ』テーマ曲



by chikurinken | 2018-11-09 07:09 | ドラマ
<< 『ルーツ』(5)〜(6)(ドラマ) 『ひとりじゃなかよ』(本) >>