KGBの刺客を追え
(2017年・英True Vision Productions)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー
ロシアの闇は深い
2006年、ロンドンで、英国から政治亡命していた元KGBスパイのリトビネンコが謎の死を遂げた。リトビネンコはその死の直前、警察の当局者を病室に呼び出し、自分がこのような(重病の)状態になったのは、ロシア当局による工作のためであり、これは暗殺事件であると語る。その供述は9時間にも及び、内容は録音された。まもなくリトビネンコは死去するが、その供述には信憑性があり、しかもリトビネンコの尿から多量の放射性物質ポロニウムが検出されたために、彼の言葉が裏付けられることになった。
やがてリトビネンコの証言に基づいて捜査が進められ、2人のロシア人スパイが容疑者として浮かび上がる。英国警察はロシアに赴き、容疑者から供述を得るが、ロシア当局から妨害され、捜査の大きな進展は得られなかった。しかし十分な証拠が提示されたとして、この事件は、殺人事件として立件されることになった……というその過程が、証言を交えて描かれるのがこのドキュメンタリーである。
通常は原子炉内にしかない放射性物質が使われたこと、原子炉は特にロシアでは厳重に管理されていることから、このような殺人の命令を出すことができる人間はロシアのトップしかいないという結論を、このドキュメンタリーでは出している。実際、リトビネンコが当局に追われるようになったきっかけは、KGBの後継組織、FSB(ロシア連邦保安庁)のスタッフが、当時の政治家による私的な政敵の攻撃(殺人)に利用されていることを告発したことであった。こういうことを考え合わせると、あの人が浮かび上がってくるのは理の当然。ロシアの闇は深い。
★★★☆参考:
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