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竹林軒出張所

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『紀ノ川』(映画)

紀ノ川(1966年・松竹)
監督:中村登
原作:有吉佐和子
脚本:久板栄二郎
撮影:成島東一郎
美術:梅田千代夫
音楽:武満徹
出演:司葉子、岩下志麻、田村高廣、東山千栄子、丹波哲郎、有川由紀、沢村貞子

少々バランスの悪さを感じる

b0189364_14503657.jpg 有吉佐和子原作の同名小説の映画化。地方の名家に嫁いだ花という女性(司葉子)の半生記である。花の視点で嫁ぎ先の「家」との関係、夫や娘、息子との関係の他、その家や家族が激動の時代の中で翻弄される有様が描かれる。映画では、主人公の花の22歳から72歳までが描かれ、当時34歳だった司葉子が娘役から老婆役まで演じる。老婆役は少々無理があるが、そこそこ無難にこなしてはいる。
 紀ノ川を下る豪華な嫁入りシーンや祝言のシーンなどは地方の名家の有り様が再現されていて、無形文化財と言っても良いような豪華なシーンである。紀州の自然や当地での生活の様子なども映し出され、今は失われた美しい自然の映像や家屋を含む生活風景にはひたすら感心するが、ただストーリーはかなり端折った感覚があり、その一方でこういったシーンが長々と映し出されることについては、多少のバランスの悪さも感じる。それにせっかくの武満徹の音楽が、少々おどろおどろしかったりしてあまりうまい使われ方でないのも気になるところ。素材は豪華だがもう一つ料理しきれなかったというような印象が残る。
 キャストについては、司葉子と丹波哲郎が特に魅力的である。司葉子演じる花のことを、周りのすべて(の川)を取り込む紀ノ川と同じで周りの人やもの(家を含む)を取り込んで自分の懐に入れてしまうのだと、義理の弟役の丹波哲郎が岩下志麻に話すシーンがなかなか印象的で、これがこの映画のテーマの一端にもなっている。他のキャストの演技は総じて並みという印象で、大作であった割にはかなり地味な映画になってしまった。この映画も30年ほど前に見ているはずなんだが、司葉子と岩下志麻のぶつかり合い以外ほとんど憶えていなかった。それもやはり、演出と脚本がもう一つだったことが原因かなと今回見ながら感じたのだった。
 蛇足ではあるが、『俺は男だ!』の吉川君でお馴染み(?)早瀬久美も「新人」として出ていたらしいが、結局どれが彼女なのかわからなかった。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『華岡青洲の妻(映画)』
竹林軒出張所『恍惚の人(映画)』
竹林軒出張所『彼岸花(映画)』
竹林軒出張所『秋刀魚の味(映画)』

by chikurinken | 2018-10-27 07:50 | 映画
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