炎立つ 総集編 (1)(1993年・NHK)
原作:高橋克彦
脚本:中島丈博
演出:門脇正美、三井智一他
出演:渡辺謙、村上弘明、古手川祐子、村田雄浩、新沼謙治、佐藤慶、佐藤浩市、豊川悦司、里見浩太朗、財前直見、萩原流行、坂本冬美
大河ドラマは幕末と戦国だけじゃない 平安時代末期に栄えた奥州藤原氏を扱った大河ドラマ。1993年に放送されたもので、大河ドラマとしては珍しく3部構成になっている。第一部「北の埋み火」が全12回で、藤原経清(渡辺謙)が主人公である。奥州に渡った経清が、安倍氏が支配する東北の金を狙う国司、藤原登任(名古屋章)の不正を目の当たりにして、この国司と対峙する安倍氏側に与するようになる。藤原登任は安倍氏の平定に失敗しやがて国司を解任されるが、その後奥州に入った源頼義、義家親子が安倍氏を平定しようとして、安倍氏との間で長い戦闘状態に入る。これが前九年の役である。これが第一部。
第二部「冥き稲妻」は、安倍氏が滅んだ後、その安倍氏の領地を代わって支配した清原氏の話で、経清の子どもである藤原清衡(村上弘明)が台頭し、最終的に清原氏を滅ぼして支配権を手中に収めるまでの話で、要するに後三年の役がこれに当たる。
第三部は、その80年後、繁栄する奥州藤原氏が、源頼朝の画策で滅ぼされる過程が描かれる。言ってみればこの『炎立つ』、奥州藤原史になっていて、3つの時代に区切ったためにダラダラと続かずに非常に引き締まった構成になっていた。特に第一部で描かれる藤原経清と安倍貞任(村田雄浩)の友情が非常に気持ち良く、最初に見たときから印象に残っていた。また、登場人物達のさまざまな複雑な思いが表現されているなど重厚な面も備えており、NHK大河ドラマの中ではもっともできの良い部類の作品であった。ただ第二部、第三部は、目新しい素材であったために新鮮だったが、第一部に比べて若干落ちるという印象を持っていた。今回も第三部は結局見ずじまいで終わった。
で、そのあたりのいきさつがウィキペディアに載っていて、何でも原作が第一部までしかできておらず、第二部以降は脚本家が、原作ができあがる前にどんどん話を先に書いたらしいのである。そのために原作者と脚本家の間に一悶着あったという話も、脚本家によって
『シナリオ無頼』という著作の中で披露されているらしい(この本読んだはずなんだが、このエピソードについてはまったく記憶になかった)。
ドラマについては、渡辺謙と村田雄浩が非常に好演で、佐藤慶、佐藤浩市、豊川悦司も強烈な個性を演じていて水準が高い。また大道具が昨今の大河ドラマと違って、豪華でよくできているのも目に付いた。
★★★☆参考:
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