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竹林軒出張所

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『選挙2』(ドキュメンタリー)

選挙2(2013年・Laboratory X)
監督:想田和弘
撮影:想田和弘
出演:山内和彦、山内さゆり(ドキュメンタリー)

冗長で無駄に長い

b0189364_15250516.jpg 2005年に、川崎市議会議員選挙に立候補し当選した山内和彦氏が、2011年再び同じ選挙に出馬する。その選挙活動の様子を追ったドキュメンタリーがこの作品。前回の選挙は、ドキュメンタリー映画『選挙』で描かれていたが、今回はその続編に当たる。
 前回は外部の人間がいきなり(自民党に代表される)日本型選挙の現場に入ったときにどう感じるかという視点がテーマだったが、今回は、普通の人間が普通の感覚で日本型選挙を戦うとどうなるかという実験的な「観察映画」である。「実験的」と言っても、製作者側は単に山内氏に密着し、他の候補を含む選挙の様子を撮影するだけで、実際に「実験的」なのは山内氏である。かつては落下傘候補として自民党議員になったが、その次の選挙では推薦を受けられなかったのか(あるいは他の自民党議員への義理があったのか)結局出馬せず、一般人として過ごしていたが、2011年の福島原発事故で(国民が騙されていたことについて)憤りを覚え、その憤りを人々に表明したいという動機で急遽出馬を決める。そのため選挙活動もおざなりで、ポスターを張って選挙ハガキを送るだけで、街頭演説もほとんどしない(最終日に放射能除去作業者のコスプレをした状態で数回だけ街頭演説を行った)。ときどきポスターの掲示板をまわって剥がれているポスターを張り直すという活動がメインで、撮影者はそれに同行して取材する。したがって動きはあまりなく、山内氏の聞き語りが中心になる。他の候補に対するコメントや、福島原発事故対策や原子力行政への憤りなどが語られるが、これがこのドキュメンタリーの一番面白い部分と言っても良い。なんと言っても山内氏の魅力がこの作品のミソである。
 ただし、この程度の活動で選挙を勝ち抜こうというのは虫が良すぎるのは誰の目にも明らかで、もちろん彼の言っていること、つまり名前を連呼したり街を歩いている人に握手を強要したりすることはおかしい、政策を主張すべきだというのはきわめて正論であり同意するが、実際に名前と顔が知られないことには、票が集まるわけがないじゃないかというのは第三者的に見れば明らかで、本人も言っていた「青島幸男なみ」の活動では、一般人が当選するには無理がある。前の作品(つまり『選挙』)による知名度を少々過大評価しすぎたのでは……と僕自身は感じた。結果は当然落選である。
b0189364_15251131.jpg このときの選挙は、東日本大震災の直後で自粛ムードが漂っていたことから、当初はどの候補者も名前を大音量で連呼することはあまりなく、街頭演説も控え目で、非常に穏やかで「正常な」感のある選挙だったが、数日過ぎると案の定堰を切ったように「正常化」した。山内氏が訴えるような、政策を主張してそれを有権者が吟味するというような選挙は今の日本では決して起こり得ないということが、この過程を通じて徐々に明らかになってくるのがなかなか虚しい。そもそも日本の有権者のほとんどは、個人的な利害が絡んでいない限り選挙になんか関心がない。個人的な利害がある人ばかりが選挙に参加するため、利益誘導型になってしまう。システムを抜本的に変えない限り、選挙互助団体である自民党や公明党がいつまでも勝ち続けるのは目に見えている。そういうことをあらためて思い知らされるドキュメンタリーであった。
 ドキュメンタリー自体は、日常風景の撮影が非常に多く、無駄に長いという印象である。なんせナレーションがないドキュメンタリーが、2時間半を超えるのである。途中他の候補者(自民党)から撮影するなとクレームが来たりして緊迫する場面があったが、こういうシーンが続かなければ2時間以上もドキュメンタリー映画を見続ける元気はない。なお、僕は自民党についてはまったく共感を覚えていないが、彼らの(撮影を拒否するという)主張については一理あると思う。ただ映像化されると、カメラに対するクレームがいくら正論であってもその人が悪者に見えてしまうのは世の常で、この作品でもご多分に漏れない。映して欲しくないという人を撮影する(その上、映画作品という形で残す)のは、映像という名の暴力であると思う。
★★★

参考:
竹林軒出張所『選挙(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『自民党で選挙と議員をやりました(本)』
竹林軒出張所『精神(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『Peace(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2018-10-07 07:24 | 映画
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