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竹林軒出張所

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『選挙』(ドキュメンタリー)

選挙(2006年・Laboratory X)
監督:想田和弘
撮影:想田和弘
出演:山内和彦、山内さゆり(ドキュメンタリー)

日本の異様な選挙について

b0189364_17181392.jpg 以前NHKの『BS世界のドキュメンタリー』で短縮版(ピーボディ賞の受賞対象はこの番組らしい)が放送されたときに見て、その後劇場公開時にこのフルバージョン(120分版)を見た。ということで今回で見るのは3回目ということになる。
 このドキュメンタリーの主人公、山内和彦という人は、川崎市議会議員補欠選挙において、自民党の公募候補として採用されて出馬したいわゆる落下傘候補。そのまったくの選挙素人である山内氏が、選挙に出馬して奮闘する様子を密着撮影したのがこの作品である。ナレーションは一切無く、ただ淡々と選挙準備、選挙活動、選挙後が映像で紹介されるという作品。
 とは言うものの、選挙活動などというものは一般人にとってはまったく縁遠い世界であるため、その様子は非常に興味を引く。特に日本独特と思われるあの名前連呼型の独特の選挙運動は、こうやって内部の目で映像化されるとその異様さが一層目を引く。ましてや舞台になるのが自民党の選挙事務所である。山内がこのドキュメンタリーの中で語っているように、自民党は体育会的で、上下関係や義理人情に結構うるさい。自称「文化系」の山内が感じている違和感は見ているこちらにも伝わってきて、自民党、ひいてはそれを支持する日本人の体質が見えてくるようである。山内が自民党の先輩達にやたら怒られたりするんだが、さながら自分が責められているようで、思わず感情移入してしまう。
 また同時に、自民党が、信条や思想云々で集まっている政党と言うより、選挙互助会であるというのも映像から見えてくる。この選挙では、補欠候補である山内を助けるために、同じ自民党に属する川崎市会議員や、その支持者らが集まってきて、山内の選挙活動を支援している。次回以降の選挙では、彼らは皆、山内と票を争うライバルになるにもかかわらずである。そういう部分に、自民党、あるいは日本人の特質が見えてくる感じがする。
 僕が最初に見た短縮版は、『BS世界のドキュメンタリー』の「世界の選挙」みたいなシリーズで放送されたもので、多分に海外で見られることを意識させられるシリーズだったんだが(実際に200カ国近くでテレビ放映されたらしい)、そのことを知っていたため、自分自身もやや客観的な視点で日本の選挙に接する機会が得られることになった。実際にこのドキュメンタリー自体、日本の選挙を客観的に捉えており、日本の自称「民主主義」選挙のサンプルとして非常にユニークな存在になっている。同時にこれが世界で公開されることに一抹の恥ずかしさも感じる。もう少し日本の選挙制度、政治システムも何とかできるんじゃないかと思ってしまうが、あのアメリカの大統領選挙みたいなクレイジーなのも勘弁してもらいたいところではある。
2009年ピーボディ賞受賞
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『自民党で選挙と議員をやりました(本)』
竹林軒出張所『選挙2(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『精神(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『Peace(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『日本の異様な結婚式について(ラジオドラマ)』

by chikurinken | 2018-10-06 07:17 | ドキュメンタリー
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