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竹林軒出張所

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『普通の人々』(映画)

普通の人々(1980年・米)
監督:ロバート・レッドフォード
原作:ジュディス・ゲスト
脚本:アルヴィン・サージェント
出演:ドナルド・サザーランド、メアリー・タイラー・ムーア、ティモシー・ハットン、ジャド・ハーシュ、エリザベス・マクガヴァン

重厚に作り込まれたハリウッド映画

『普通の人々』(映画)_b0189364_15204906.jpg ロバート・レッドフォードの初監督作品。初監督作品にもかかわらず、この映画でロバート・レッドフォードはアカデミー賞の監督賞まで受賞している。
 それまでのハリウッド映画とは基調が異なり、終始、家族の問題が描かれる。兄が事故で死んだために精神的に不安定になった弟、コンラッド(ティモシー・ハットン)と、彼を扱いかねる母親(メアリー・タイラー・ムーア)との葛藤、それでも何とか円満な家族を維持しようと奮闘する父親(ドナルド・サザーランド)の家族関係が、このドラマの柱の部分になる。一家は中流の上という、一般的には他人にうらやまれるような環境ではあるが、皆心の中に抱えるものがあり、そこに葛藤が生まれる。
 現在では、こういった家族の問題はあちこちで取り上げられていてそれほど珍しくもないが、1980年にハリウッド映画でこれを取り上げたことは驚嘆に値する。ハリウッド映画らしい大きな事件や事故もないが、それでも心に迫るものは大きい。行き場のない不安定さが見る側にも伝わってきて、コンラッドを担当する心理療法士が、唯一の救いという感じで登場する。そのため心理療法のシーンも多く、さながら心理療法の宣伝映画のようにも見える。しかしこの心理療法のシーンが大きな見所になっているのも事実。実に見応えがあった。
 公開当時から見たかった映画で、その期待に反することのない、重厚に作り込まれた作品である。季節の移ろいが反映された自然の描写も非常に美しく映像的にも良質である。キャストの演技はどれも超一流で、中でもティモシー・ハットンは出色(この出演作でアカデミー賞助演男優賞獲得)。一見の価値がある。
第53回アカデミー作品賞、監督賞他受賞
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『沿線地図(1)〜(15)(ドラマ)』
竹林軒出張所『天国から来たチャンピオン(映画)』

by chikurinken | 2018-09-18 07:20 | 映画
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