酔うと化け物になる父がつらい
菊池真理子著
秋田書店
ネオリアリズモ風
当世アル中気質 タイトルからわかるように、酒に酔って問題ばかり起こす父を題材にしたマンガ。これもいわゆるエッセイ・マンガというやつ。著者の家族の話である。
普段はおとなしく優しい父だが、酒を飲むと人が変わる。この父、著者の幼少時から酒でいろいろと問題を起こしてきた。酒に弱いくせに飲みたがるというやつである。そのため、著者は父についてあまり良い思い出がない。あげくに著者が中学生の頃、父について気をもんでいた母が、とうとう自殺してしまう。原因が父であることは火を見るより明らかで、父も母の死後一時的に酒を止めた。ただしそれも1カ月。その後は、以前のようにぐでんぐでんで家に戻って来始める。結果的に、かつては母がやっていた父の面倒を著者と妹が見るようになった。
そういった父の問題がこれでもかというぐらい描き綴られる。しかも、成人した著者は、父に似た大酒飲みの暴力男と付き合いだし、この男に振り回されるようになる。家では父に、外ではこの男にという具合で、それが何年も続くのである。このあたりは読んでいるこちらが結構参ってくる。言ってみれば、現代のネオリアリズモである。だが、現代社会には、こういう現実が存在するのも確かだ。
現在著者は、マンガ家としてそれなりに活躍しているということで、かつての悲惨な状況からは抜け出している。もっともあんな悲惨な状況が続いていたら、心に一切余裕がなく、マンガにすることもできなかっただろうと思う。終わりの方で作者の現在の状況が紹介されているために、読者であるこちら側も救われる思いがする。「そんな時代もあったねといつか話せる日がくる」というものだ。若い頃にこういう辛い目に遭った人には、是非ともそれを糧にして幸せに生きてほしいと切に願う。
★★★☆参考:
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