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竹林軒出張所

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『父の詫び状』(本)

父の詫び状
向田邦子著
文春文庫

三題噺みたいなエッセイが多い

『父の詫び状』(本)_b0189364_18595306.jpg 脚本家、向田邦子の処女エッセイ集。元々『銀座百点』という雑誌で連載していたもので、その中から24点を抜粋して一冊の本にしたというのがこの本。
 全体的には、書き殴りみたいなエッセイで、あるテーマに沿ったいくつかのエピソードを書き連ねるというものである。そのため、あまり面白味のないものもあるが、著者の幼少時代について書いたエピソードはかなりユニークである。
 こういった箇所では、著者の幼少時代の父母、兄弟姉妹、当時の生活の想い出が描かれており、それがために昭和初期から戦後までの日本の1家族の姿というものがあぶり出されていて、非常に興味深く読んだ。特に、小さなことで怒りすぐに怒鳴り散らす父親のエピソードが非常に印象的であり、この父親のイメージは、著者が脚本を書いた『あ・うん』の登場人物とも重なる。こういうところに著者の経験が反映されているということがわかる。また、このエッセイに登場する著者の母のイメージもこのドラマの登場人物(妻であり母である女性)に近いような気がする。
 目を引いた項は、表題作の「父の詫び状」の他、「お辞儀」と「子供達の夜」あたりか。「お辞儀」に出てくる黒柳徹子の留守番電話のエピソードは、『トットてれび』でも再現されていたもので、割合有名な話だが、初出はこのエッセイだろうと思う。ちなみに『トットてれび』には「向田邦子」(ミムラが演じていた)も登場していた。あのドラマはつまらなかったが「向田邦子」の印象は残っている。また「父の詫び状」についてはその後ドラマ化されている。内容についてはよく知らないが、このエッセイのエピソードをまとめてドラマにしたものではないかと推測される。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『父の詫び状(ドラマ)』
竹林軒出張所『向田邦子が秘めたもの(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『あ・うん (1)〜(4)(ドラマ)』
竹林軒出張所『続あ・うん (1)〜(5)(ドラマ)』
竹林軒出張所『阿修羅のごとく(ドラマ)』
竹林軒出張所『阿修羅のごとく パートⅡ (1)〜(4)(ドラマ)』
竹林軒出張所『胡桃の部屋 (1)〜(3)(ドラマ)』
竹林軒出張所『思い出トランプ(ドラマ)』
竹林軒出張所『寺内貫太郎一家 (22)(ドラマ)』
竹林軒出張所『花の名前 向田邦子漫画館(本)』
竹林軒出張所『その時あの時の今 私記テレビドラマ50年(本)』

by chikurinken | 2018-08-09 06:59 |
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