白鯨 前編・後編(2010年・独襖)
監督:マイク・バーカー
原作:ハーマン・メルヴィル
脚本:ナイジェル・ウィリアムズ
撮影:リチャード・グレートレックス
出演:ウィリアム・ハート、イーサン・ホーク、チャーリー・コックス、ジリアン・アンダーソン、エディ・マーサン
『白鯨』見るなら、これ アメリカ文学『白鯨』のドラマ化作品。ドラマ化といっても、手間も金もかかっており、まったく映画と遜色ない。劇場公開されてもまったく違和感はない。キャストも映画人が揃っている。ただし、監督のマイク・バーカーはドラマの人で、このドラマの前年に
『シーウルフ』という海洋ドラマを作っている。この2本のドラマ、どちらも舞台が海で、しかもスタッフがかなり共通しているんで(DVDのジャケットもそっくり)、もしかしたら合わせ技で2本まとめて作ったのかも知れない。
『白鯨』については、以前グレゴリー・ペックがエイハブ船長を演じている1956年作の映画をテレビで見たことがあるが、エイハブ船長の狂気ばかりが強調されているようであまり良い印象は持たなかった。このドラマ版では、エイハブ船長は多少狂気がかってはいるが、しかし行動に整合性がとれていて、船員たちとの葛藤もしっかり描かれている。また、詩的な表現もところどころにあり、原作の味がかなり残されているのではないかと感じた(原作は読んでいないので詳細はわからない)。
それに何より、帆船や海、クジラなどの映像表現が素晴らしく、非常にリアルな映像が展開され、それがこのドラマの大きな魅力になっている。CGを多用しているのではないかと思うが、CG映像に往々にして見られるような違和感はほとんどない。また当時の風俗がしっかりと描かれているなど、細かい部分にも目が行き届いていて、ドラマ化作品としてはかなり水準が高いのではないかと感じる。何よりインパクトのある表現が随所にあって、そういう一つ一つのシーンが記憶に残る。そういう意味でも、優れた映像化作品と言えるのではないかと思う。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『クロムウェル 英国王への挑戦(映画)』竹林軒出張所『レ・ミゼラブル (1)〜(4)(ドラマ)』竹林軒出張所『チャタレイ夫人の恋人(1993年ドラマ版)(ドラマ)』