終りに見た街(1982年・テレビ朝日)
演出:田中利一
原作:山田太一
脚本:山田太一
出演:細川俊之、中村晃子、なべおさみ、菊地優子、山越正樹、酒井晴人、ハナ肇、樹木希林、蟹江敬三
「終りに見た夢」じゃなかったのか 山田太一のファンタジー小説をドラマ化した作品。脚本も山田太一。
この作品は、1982年にテレビ朝日で作られたものだが、リメイク版が2005年に同じ局で作られており、僕はかつてそちらで見た(
竹林軒出張所『「早春スケッチブック」、「夕暮れて」など(ドラマ)』参照)。内容は、両方でほとんど同じという印象で、キャストや映像、道具立てが違っているくらいではないかと思う。キャストについても、当然それぞれで異なるが、どちらも同じようなキャラクターで一貫しており、このあたりは脚本家の意向がかなり働いていると見た。しかしこれだけ完璧に作り直すんだったら、あまりリメイクの意味はないんじゃないかなどと逆に考えたりする。もっともこの82年版『終りに見た街』の映像が残っているかどうかはわからないわけで、残っていないんだったら、こういう類のリメイクの意味あいは十分あることになる。しかし82年という時代を考えれば残っているような気がする。なんせ当時は家庭用ビデオデッキが流通していたんだから。今回見たのも、YouTubeにアップロードされていたもので、元々は家庭用デッキで録画されたもののようである。画質はかなり悪いが、現実にテレビ朝日が山田ドラマをDVDなどの形式で発売していないし放送もしないんだから、仕方がない。見れるだけありがたいというものである。
先ほども言ったように、前に見たリメイク版とかなり似ているため、取り立てて違う感想はないのだが、しかし今回見てみた感じでは、前回見たときのような解釈で良いのか、少しわからなくなった。というのも、ラストシーンが、中間部(つまり戦時中のシーン)からそのまま継続して流れているため(主人公の髪型、格好などが共通している)、大どんでん返しオチではなくなる。そうすると、一種のパラレル・ワールドみたいな意味あいになるのか。2005年版でラストシーンがどうなっていたかあまり憶えていないのでなんだが、そのあたりがよくわからない。クエスチョンがいろいろと残る作品だった。個人的には、大どんでん返しオチにして「終りに見た街」ならぬ「終りに見た夢」にした方が絶対に面白いとは思うが。リメイク版を見たとき唯一最後のオチで救われたような作品だったのに、今回それが欠けていると感じたため、面白さも中位なり……という感じで終わってしまった。何より、疑問ばかりが頭の中に残って大層気持ちが悪い。
1982年度テレビ大賞優秀番組賞受賞
★★★参考:
竹林軒出張所『「早春スケッチブック」、「夕暮れて」など(ドラマ)』竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』