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竹林軒出張所

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『ロシアで働く』(ドキュメンタリー)

ロシアで働く(2017年・チェコKrutart/Česká televize)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

驚愕のロシア労働事情

b0189364_15433125.jpg ロシアのアフトヴァース社という自動車メーカーの立て直しのため、再建請負人のボー・アンダーソンがCEOとして招かれた。このドキュメンタリーは、そのCEOから見たロシアの労働事情で、「ロシアで働く」という邦題になっているが、タイトルから受けるイメージとは異なる。決して出稼ぎ肉体労働者の話ではない。
 とは言え、実際アンダーソンが目にするアフトヴァース社の労働事情は、これがロシアの一般的な姿かどうかわからないが、かなり衝撃的である。なんせ、労働者たちがろくに仕事をしない。映像で映される仕事はことごとくがやっつけ仕事で、労働者は見るからに仕事をやりたくなさそう。実際積極的にはやっていない。少なくとも日本の労働の現場とはまったく違う。アメリカの大手自動車会社の工場も似たり寄ったりという話を聞くので、もしかしたら一定の地位にあぐらをかき続ける企業の姿なのかも知れないが、ともかく日本人が持っている一般の労働者のイメージとは大分違うのは確か。少なくとも彼らが作る製品を利用したいとは思わない。
 また、この会社の寒中水泳クラブが(活動で必要だからという理由で)除雪機を新社長に要求したという話も紹介される。新社長もあちこち手配して古い除雪機を彼らに送ったのだが、最新型の機種でなければダメだという理由でクラブ側が拒否したらしい。
 こういうようなぬるま湯体質……というより労働自体が成立していない環境を変革すべく、アンダーソンはさまざまな改革を行う。こういう改革の中心になるのは、当然ながらやる気のない社員を解雇するということなんだろう。で、これまた当然ながら、それに対する反発も起こる。
 このドキュメンタリーでは、改革反対の労働者による集会が映されるが、その場である労働者が、かつては定時に来るだけで給料がもらえたのに今はハードワークを強いられる、あり得ないなどと言っていて、その演説が賛同の拍手で迎えられていた。まさしく驚嘆である。根本的に価値観を変えるところから始めない限り、ちゃんとした製品はできないのではないかと思うが、しかしその価値観の転換は相当困難を極めそうである。
 このドキュメンタリーを見ると、自分がCEOの立場だったら何ができるかなどと考えてしまうんだが、結局のところ、どうしようもない。手の施しようがないので、このまま倒産するしかなさそうである。アンダーソンも、こういう状況を知っていたらCEOを引き受けなかったと言っていた。実際彼はその後、改革途中で株主により解任されてしまい、改革は結果的に失敗に終わった。ただし彼が在任中に開発を進めたラーダの新モデルは売上も好調らしく、ロシア国内のカーオブザイヤーに選ばれたというんだから、皮肉なものである。
 なにしろ労働に対する考え方がこうも自分と違うと、どちらが正しいのかわからなくなる。いやー世界って広いもんですね。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『ソビエト連邦のコマーシャル王(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2018-04-07 07:43 | ドキュメンタリー
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