ブログトップ | ログイン

竹林軒出張所

chikrinken.exblog.jp

『ひとを〈嫌う〉ということ』(本)

ひとを〈嫌う〉ということ
中島義道著
角川書店

「嫌われる」を受け入れるということ

b0189364_15350187.jpg 哲学者が人間の「嫌い」について分析した本。自己啓発本の一種と考えて良いのかどうかわからないが、読み終わった段階で書かれていた内容をほとんど忘れてしまうという、自己啓発本らしい特徴があるので、あるいは自己啓発本と言って良いのかも知れない。
 ただし、関心するような記述もあり、無価値な本かというと必ずしもそうではない。特に「嫌い」という感情、「嫌われる」という現象に対して、それを正面から受け入れるべきとする主張はなかなか興味深い。人は誰しも他人から嫌われたくないと考えるが、そもそもそう考える人自体が誰かを嫌うのであれば、誰かに嫌われないということは起こり得ない。であれば嫌われることを必要以上に恐れずに、それを受け入れ、しっかりと対峙することが人生を豊かにすることに繋がるというのが著者の主張である。
 こうした著者の提言は大いに受け入れられるが、100ページに渡って展開される「「嫌い」の原因を探る」という章が、きわめて退屈で、面白味を感じなかった。こうやって細かく分けながら分析していくというアプローチはカント的で哲学者らしいとも言えるが、結局この箇所が全体の半分近くを占め、しかも内容ももう一つということになれば、むしろこの章がマイナスになっているとも感じる。全体を貫く主張やトーンがそれなりに魅力的であったため、こういう方向に進んでいったのは少々もったいない気がする。この本と著者に対しては「嫌い」の感情は持たなかったが(おそらく自虐的なエピソードが繰り出されているため、読者は「嫌い」という感情を発動しにくくなるのだろう)、「嫌い」の原因究明の章のために途中ダラダラしたとりとめのない印象が生じたのは確かで、そのあたりが本の価値を落とす結果になってしまったように思う。
★★★

参考:
竹林軒出張所『「怒り」のマネジメント術(本)』
竹林軒出張所『「やればできる!」の研究(本)』

by chikurinken | 2018-03-22 07:34 |
<< 『ラスト・ソング』(本) 『ビギナーズ・クラシックス 史... >>