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竹林軒出張所

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『クリーン・センター訪問記』(映画)

クリーン・センター訪問記(1976年・小川プロダクション)
監督:小川紳介
撮影:奥村裕治
ドキュメンタリー

ゴミ焼却施設の広報映画のようだ

b0189364_17042166.jpg 山形県のゴミ焼却施設、通称「クリーン・センター」の業務を紹介するドキュメンタリー映画。
 このクリーン・センター、数年前に建てられた当時最新設備だったということだが、(ゴミ処理施設であるため)そもそも山間に建てられており、地元民にとってはあまり愉快な存在ではない。そのため、煙突から粉塵が放出されるとなると、地元民から何とかしてくれとクレームが来る。そのため、粉塵が出ないようさまざまな設備を設けており、職員自身、粉塵の監視も怠っていない。しかしそれでも粉塵がまったくなくなるということはない。
 とは言いながら、その一番の原因は、市民が出すゴミが分別されていないせいだということがわかる(クリーン・センター側の主張によると)。結局のところ、ゴミが焼却の質を決定するというのである。実際にゴミ収集の現場が映されるが、焼却ゴミに缶が大量に混ざっていたりして、今の日本の観点から考えると、ゴミの分別の質は非常に劣る。やり放題にも見える。この映画が撮影されたのが1975年で、当時の日本のゴミ分別に対する意識は概ねこんなもんだったように思う。あちこちでゴミ焼却の問題が噴出したのは記憶に新しいところだが、粉塵公害、ゴミ公害を少しでも少なくしようということでドイツの方法をまねて分別を徹底するという方向に進んだのだった。現在のような形になったのもこういう過程を経ているわけで、それを考えると、この映画のような啓蒙活動が、ゴミ対策の進歩に一役買ったとも言える。
 実際にこの映画では、焼却施設よりの立場が貫かれており、むしろこの焼却施設の広報映画ではないかと思えるほどである。しかも最後に、関係者全員を一堂に集め、一人ずつ彼らの肩書きや仕事を訊いていくというシーンまであって、このシーンでは「記念撮影」というキャプションが出てくる。NHKの昼のバラエティ番組さながらである。それを考えると、小川プロの映画とは思えないような印象さえ受けるが、そうは言っても主張はきわめて正論であって、何も反論はない。このセンター側にシンパシーを感じるほどだ。
 映像は全編モノクロで、しかも職員に対するインタビューもマイクを突きつけるような類のもので、かなり古さを感じる。しかもフィルムも結構劣化していて、レベル的には『青年の海』とほとんど変わらない印象さえ受ける。1975年の一般的な映像の水準はもっと高かったように思うが、製作側が貧乏所帯だったせいだとしか考えられない。方法論もなんだか洗練されておらず、ローカルのケーブルテレビ局並みである。そういうわけで質は決して高いとは言えない。
 とは言え、彼らからの主張は十分伝わってきたし、焼却場の設備についてもよく理解できた。したがってこの映画の目論見(本当のところはわからないが)は成功しているのではないかと思う。
★★★

追記:今確認したところ、やはり山形県上山市の広報映画だそうだ。

参考:
竹林軒出張所『青年の海 四人の通信教育生たち(映画)』
竹林軒出張所『廃棄家電の悲しき行く末(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2018-03-12 17:04 | 映画
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