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竹林軒出張所

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『山の音』(映画)

山の音(1954年・東宝)
監督:成瀬巳喜男
原作:川端康成
脚本:水木洋子
出演:原節子、山村聡、上原謙、長岡輝子、杉葉子、丹阿弥谷津子、中北千枝子、金子信雄

キレイキレイな内容のスーパーダイジェスト

b0189364_17524057.jpg 川端康成原作の同名長編小説を映画化した作品。当初「義父から嫁に対する恋情」の映画と聞いていたんだが、この作品では、夫に虐げられる嫁を支援する優しい義父という描き方で終始している。この義父の中に恋情を感じるのはちょっと無理かなと感じる。ただし原作では確かに恋情として描かれているらしい。映画ではあちこちが端折られているようで(原作を読んでいないので正確にはわからないが)、そのためかなんとなく気が抜けたビールみたいな物足りなさがあちこちに残る。
 そもそもなぜこの主人公の嫁、菊子が最終的にこのような結論を下したのかが、この映画からはなかなか見えてこない。原作では夫のことがもっと詳細に描かれているようで、そのあたりも合点が行くように描かれているらしい。また義父についても、嫁に恋情を持つ過程や動機がしっかり描かれているらしいが、そのあたりもこの映画では完全に抜け落ちている。結局人間の汚い部分を全部排除して、浄化したような部分だけが残ったわけで、小説の映画化作品としてははなはだ大きな問題が残る。成瀬巳喜男らしくそつなくまとまってはいるが、結局(ヤルセナキオと言われた成瀬巳喜男だけに)やるせないだけで終わってしまうという結果になった。
 主演の夫婦は、上原謙と原節子で、同じ監督の『めし』と同じキャスティングでしかも設定も似ている。ただしこの映画の登場人物、菊子については、夫が「いつまでも子ども」と語っているにもかかわらず、原節子にあまり子供っぽさが漂ってこないんで、少しミスキャストだったような気がする。義父役は山村聡だが、「嫁への恋情」ということで『瘋癲老人日記』で演じていた瘋癲老人を想像していたが、この映画ではまったく違っていて、知的かつ聡明で温厚な老紳士になっていた。山村聡らしい役柄ではあるがキャラ設定としては少々物足りない。また山村は上原謙の父の役を演じていたが、実際は山村聡と上原謙はほぼ同い年(上原謙の方が数カ月年上)で、そういう点では結構強引なキャスティングとも言える。
 今回見たのはNHK-BSで放送されたものだが、画像があまり良くなく、途中画面全体からピントが外れるシーンなどもあった。リマスター版があるかどうか知らないが、もう少し何とかならないものかと感じた。
★★★

参考:
竹林軒出張所『めし(映画)』
竹林軒出張所『瘋癲老人日記(映画)』
竹林軒出張所『流れる(映画)』
竹林軒出張所『浮雲(映画)』
竹林軒出張所『稲妻(映画)』
竹林軒出張所『乱れる(映画)』
竹林軒出張所『放浪記(映画)』
竹林軒出張所『女が階段を上る時(映画)』

by chikurinken | 2018-02-04 06:52 | 映画
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